本年最後のレビュー

 

 

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

『ゲームの王国』上・下 小川哲著を読む。
 
クメール・ルージュが支配しつつあったカンボジア
その時代に生まれた女児と男児
女の子の父親はどうやら本名サルト・ソロ。有名な通り名はポル・ポト。らしい。
男の子は頭脳明晰。
二人の出会いから難を逃れるさまがドキュメンタリータッチで展開する。
少年と少女を含めて4人の友情物語ともいえる。
 
上巻では史上稀にみる暗黒政治が述べられる。
インテリ層に属していたポル・ポトが、なぜインテリゲンチャを粛清したのか。
泥(プク)という「土と話せる」キャラが強烈。
 
下巻では大人となった二人の命運が重層的に綴られる。
女の子は将来を嘱望される政治家となる。
男の子は「脳波測定を応用した」画期的なゲームソフトを開発する。
女性政治家の過去をいぶかるTVディレクター。
嘘や偽りがあると激しく勃起する能力がある。
しかし隠蔽された過去のページを見破ることはできない。
 
上巻がゆっくりと話が進むが、
下巻に入るとテンポアップする。
このチェンジ・オブ・ペースにわくわくさせられる。
 
4人の仲間で行ったゲーム。
彼女は政治家としての自身の行く末をゲームで判断する。
ゲーム、占い、もしくは魔法。
一方少年は開発したゲームに興じる。
ゲームで過去が書き換えられたら、未来が見えたら。
魔法使いの水晶玉のように。
 
VRやARを駆使したゲームで人はどうなるのか。
いろんなことを考えさせてくれるがエンタメ性もばっちり。
どんでん返しのラストまで一気読み。

参考本として『ポル・ポト―ある悪夢の歴史』フィリップショート著 山形浩生訳のレビュー