もしかしたら

 

嘘と正典

嘘と正典

 

 

喪中欠礼、病欠、葬儀・通夜…。
身体が資本だと、なんとなく体幹レーニングは続けてはいるが。
 
『嘘と正典』小川哲著を読む。
テイストが異なる6篇の短篇集。味わいは違うが、作者の鋭い視点が冴え、
考えさせられるが、センスがあり、読み応えのあるエンタメ小説に仕上がっている。
SF嫌いの人も苦にせず読めるはず。短い感想を。
 
『魔術師』

マジックとタイム・マシンがテーマ。
見た目も良く腕は一流だったが、人間的には最悪の魔術師を父に持った兄妹。
憎みながらも父と同じマジックの道に入る。
タネも仕掛けもあるのか、ないのか。読む方が煙に巻かれる。
 
『ひとすじの光』

ある競走馬と父と息子がテーマ。競走馬の能力は血統でほぼ決まるとか。
作家となった息子の才能の何割かは遺伝か。ただし、現在スランプ状態。
亡くなった父親が持っていた競走馬。
そのルートを書き記していた父親の原稿の続きを書く。
 
『ムジカ・ムンダーナ

もし音楽が貨幣や財産として扱われたら、こうなる。
とある島において事例的に扱った作品。
 
『嘘と正典』
もしマルクスエンゲルスが袂を分かてば、『共産党宣言』は刊行されず、
共産主義は誕生しなかったかもしれない。
そう考えたCIAは過去に戻って画策を目論む。
天才肌だが金遣いも荒く、人望の薄いマルクス
一方エンゲルスは手堅い工場経営者でマルクスの金の無心にも気前よく応える。
はたして、どうなったのか。
『HHhH-プラハ、1942年-』 ローラン・ビネ著の読後感と良く似ている。