決して他人事ではない7つの科学に関する事件

 

 

『科学事件』柴田鉄治著を読む。

 

新聞や雑誌を読む。TVのニュースやワイドショーを見る。あるいは会社や近所の人との話から。昨今ではsnsか。現代人は、さまざまな情報をメディアから入手している。
入手した時はリアルタイムな情報であったとしても、それは断片であり、事実のごく一部である。


しかし、それを早計に真実として咀嚼してしまい、いつの間にか忘れ、また起こった新しい事件にヤジウマと化している。

 

本書は「脳死・臓器移植」「薬害エイズ」「体外受精」「原子力」「水俣病」「大地震」「クローン羊」の科学に関して起きた、起こっている身近な7つの事件をピックアップして、コンパクトにまとめたものである。大づかみでありながらも、その事件の経緯、国やマスコミの対応など、全貌がつかめる。これは大切なことだ。

 

本書の帯のコピーに「ますます拡大する科学技術と社会の軋轢」とあるが、これらの基本的なことを知らなければ、軋轢も感じることはないだろう。でも、決して他人事ではないのだ。

 

一読して、自分自身がこれらの科学事件に関していかに無知であったか、また記憶がいかにいい加減であるかをつくづく思い知らされた。


科学技術は、人間に豊かさ、便利さなどさまざまなベネフィットをもたらせた。確かに否定はしない。しかし、だからと言って科学の進歩=人間の進歩である、ゆえに、科学技術の発展のために、多少の犠牲は止むを得ない。と、言うのは科学の傲慢(ごうまん)ではないだろうか。

 

たとえば、国内初の心臓移植。その背景が明白になるとともに、マスコミは執刀した大学教授に対して礼賛から批判に変わる。そして臓器移植が再会された時のマスコミの過熱報道ぶりなどなど。なんか人間が実験動物にされているような気がしてならないのだ。


また、茨城県東海村のウラン加工工場の臨界事故も人間のイージーミスというか信じられないずさんな管理が命取りになりかねない見本のような、寓話のような事件である。ドイツは原子力発電を捨てたのにね。それと、地域産業振興にも貢献するのがウリの原発だけど、最も危険な作業は、地元の人がしていることも、改めて確認できた。

 

作者は朝日新聞の科学畑の記者出身だけに、マスコミの取材姿勢に対して厳しく諌める時もあり、また、必要以上に擁護や弁護をする時もある。役人や企業側の御用学者に騙されないようにするためにも、マスコミに余り煽られないように、せめてこれぐらいのことは知っておきたいものである。

 

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