脱「無料貸本屋」―道具としての図書館

   

 

 

『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』 菅谷明子著を読む。

 

行きつけの図書館はありますか。あると答えた方へ。図書館は何をするところだと思いますか。読みたい本を借りる。学校のレポートや仕事の資料を調べる。受験勉強、あるいは第二のJ.K.ローリングめざして小説執筆なんていうのもあるか。最近は、ベストセラー「無料貸本屋」などと作家から称されている日本の図書館だが、ところが、アメリカの図書館は違うと。


地域に根ざした図書館がお題目でなく、ちゃんと機能しているのだ。実際にアメリカ・ニューヨークの図書館をあちこちフィールドワークしてみた作者の数々の「驚き」が、
そのまま、読む者の驚きとなる。

 

アメリカでは知識を広げ教養を高めるだけでなく、くらし全般や地域に関しての実践的な情報も合わせて提供し、また市民が情報を活用して新しいものを生み出すことを奨励する開かれた空間に感じられた」

 

敷居が低く、本というアナログのパッケージだけではなく、データベースなどのデジタル情報も即座に得ることができ、ビデオや録音テープ、CDなど、老若男女、利用者ごとに異なる、欲しい、知りたい情報を得ることができる場所。さらに「多様な講座」も常時開催されている。


日本の図書館と最も異なるのは、ビジネス支援、起業支援も充実しているということだろう。「情報収集」や「専門家によるビジネス講座」も開設して、そこで情報交換や同好の士を見つけたりしているとか。さすがプラグマティズムの国である。

 

若者向けのハローワークというものができたが、肝心の若者がさっぱり利用しないそうだ。図書館で求人案内をしてみてはどうだろう。本書のむすびに紹介されている足立区立竹の塚図書館のように…。

 

この本は、ニューヨークの図書館の活動内容から運営方法・宣伝活動まで、紹介している。図書館のブランド戦略というのも、なかなか。資金がなけりゃ知恵を絞れ!の好例といえよう。

 

「道具」としての図書館、「『知のインフラ』としての図書館」、自分の夢を孵化させるインキュベーターとしての図書館。これからの図書館の在り方が描かれており、日本の図書館の良いモデルケースになると思う。

 

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