不条理を嗤え!ともかく嗤え!

浴槽で発見された手記 (1983年) (サンリオSF文庫)

『浴槽で発見された手記』スタニスワフ・レム著 村手義治訳を読む。

 

『SFする思考: 荒巻義雄評論集成』荒巻義雄著でこの本のレビューを読んで刺激を受けたから。


絶版らしく古書価格が高価。ダメもとで行きつけの図書館の蔵書をネット検索したら、保存庫に眠っていた!懐かしのサンリオSF文庫サンリオSF文庫が結構あるので、復刊していない作品を掘ってみようかな。


まず、「まえがき」を読んであおられる。かなり、あおられる。

 

天王星の第3惑星から捜査隊が採取した「ハルシウス因子」(細菌の一種)によって記録媒介である「パピル(紙)」が一斉に溶解してしまう、いわば情報崩壊に見舞われる。
これ以降カオスとなった地球の文明。


ところが、ペンタゴン(巨大官僚施設)と呼ばれる遺跡の浴槽から手記が見つかる。といったところ。そこには何が書いてあるのか。本文はこの手記を書いた男の行動録となっている。

 

彼は総司令官からある秘密のミッションを受ける。ミッションは不明。ペンタゴンは迷宮のようで彼は迷う。出会う人々が一見親切そうなのだが、何やら怪しくって惑う。
肩書を名乗るのだが、さて何をする仕事なのか、見当もつかない。『不思議の国のアリス』のアリス状態。

 

高層ビルのオフィスをはじめて歩くとき、どこを歩いているのか、わからなくなるときがあるが、そんな感じ。


どでかいペンタゴンやわけのわからない肩書の役人が大勢いるのは、社会主義国家のメタファーかも。


読んでいて頭のグルグル具合がアラン・ロブ=グリエなどのヌーヴォーロマン(アンチ・ロマン)のように思えたのだが、岡本俊弥の解説によると著者は否定しているそうな。要するに不条理ロマンだと。アンチではないと。

 

レムはハードSFの祖のように思えるが、作品をいろいろ読んでみるとナンセンスだったり、荒唐無稽なほら話のような作品もある。本作もその系列にあるのだろう。

 

真面目なギャグ、ギャグとは思えないギャグ。きちんとわからなくてもいいから、ひょっとしてわかってもらえるように書いてないかもしれない。くだらなねえとかどこがおもしろいのかわからないが、率直に笑ってしまうのが、この作品に対する読み手の礼儀ではないかと思う。これでいいのだ(byバカボンのパパ)。


にしても、昔の文庫本って文字が小さい!100均の老眼鏡を探して読んだりもした。

 

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