古くて新しい怪獣SFもの

 

 『旅に出る時ほほえみを』ナターリヤ・ソコローワ著 草鹿外吉訳を読む。

初出はサンリオSF文庫。何冊か、本棚のこやしになっている。
 
読んでみたら、あーら、よくできた怪獣SFもの。ちっとも古びていない。
瞬く間に読んでしまった。
 
やっと完成した「鉄製怪獣17P」。正しくは「53種類のさなざまな合金」製。
血液に似た「明るい緑色の温かい液体」が「体内を循環していた」。
エネルギー源は「生肉」だった。特技は「地下の奥底を歩くこと」。
創ったのは《人間》。20歳から40歳まで怪獣創造に明け暮れた。
《人間》の仕事をサポートしていたのが《見習工》。
この二人が怪獣を世話していた。
 
「3年間の」試験期間を経てお披露目となる。
《人間》と怪獣は時の人となる。
首相や科学芸術院総裁などが出席したパーティでほめたたえられる。
 
ところが怪獣の計り知れないパワーさらに怪獣が持つ超強力な「爆発物ルルジット」を
軍事利用する動きが出て来る。
 
《人間》に罪をでっちあげ、逮捕、監禁。「怪獣創造主」の名誉を剥奪する。
挙句に副総裁が「怪獣創造主」と名乗りをあげる。
 
これってソ連共産主義国家批判つーか風刺だよね。
国家のため、ほんとは官僚どもが私腹を肥やすために、利益につながると思えば、
略奪したり。不利益につながると思えば口封じしたり。
個人の権利なんてまったくない。

《人間》は「忘却の刑」となる。存在そのものがなくなってしまう刑。
逮捕される前、怪獣の設計図を燃やして一部パーツを持ち出す。
紙でよかった。PCならダメだろ。
国外に追放された《人間》。
持ち出したパーツで怪獣と交信できる。怪獣は話せるし、歌も歌える。
しかし、それも遠方に行くにつれ交信は難しくなる。
 
設定が『ひそねとまそたん』ぽいなと思う。
戦闘機にメタモルフォーゼするドラゴンとドラゴン乗り女子パイロットの
ニメーション。
まそたんというドラゴンの整備担当者小此木くんと《見習工》のイメージがかぶってしゃーない。
 
《人間》は生き延びて国家の体制崩壊を見ただろうか。
そのとき、怪獣は。