子どもたちは、なぜ失踪したのか

 

 

『OKAGE』梶尾真治著を読む。SF好きの友人に「多分、気に入るよ」と薦められたのが、本書である。「カジシン」こと梶尾真治は、日本のSF作家の中で、その力量は定評があるそうだ。

 

タイトルの「OKAGE」とは、江戸時代に流行ったお陰参りの「お陰」である。ある日突然、日本全国の子どもたちが同時期に失踪する。本書の舞台となっている熊本では、子どもたちが集団で阿蘇山に向かう。親や警官など大人たちが懸命に阻止しようとするのだが、とてつもなく強い謎の力に太刀打ちできない。そう、『ハメルーンの笛吹き』の現代版のような…。その理由は、目的は。そして、子どもたちを裏であやつる謎の物体。

 

霊能力のある喫茶店の女主人の登場する最初のシーンからグイグイ引き込まれていく。人生相談に訪ねてきた母子。まったく心の読めない不可思議な子ども。ほかにも、子どもたちのキャラや家族設定などが実にうまい。『陰陽師』でおなじみの式神も出てくるが、これもなかなかいい味を出している。

 

この手のものだと、前半期待させるだけさせておいて、後半意外と尻すぼみになったり、辻褄が合わなくて、腑に落ちなかったり、がっかりさせられるものが多いのだが、最後の最後まで読ませる。ホラーパニックシーンも十分に楽しむことができる。ひとえに、作者の並々ならぬ筆力と言えよう。

 

作者は熊本在住なので、具体的な熊本界隈の描写や方言が、さらにストーリーにリアリティを増している。霊能力のある女性と夫との意外な顛末も、なんだか、とてもしみる。

 

岩明均の『寄生獣』あたりが好きな人なら、かなり、はまるはず。

 

それにしても、持つべきものは、目利きの友である。

 

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