1本のロウソクから火がつく科学への好奇心

 

 

『ロウソクの科学 』ファラデー著 三石巌訳を読む。

今まで読もう読もうと思いつつ手が延びなかった本がある。この本もそう。

 

クリスマス休暇にロンドンの王立研究所で開かれた著者の少年少女向け科学講演をまとめたもの。

 

1本のロウソクをテーマにさまざまな科学的事象を実験を通して
子ども向けに平易に解説する。その内容の広さや深さに驚く。
作者の科学者としての観察眼と探求心。

 

ロウソクはなぜ燃えるのか。なぜ「明かりのともったロウソクのまわりには、かなりの風」が起こっているのか。「毛管引力」、ロウソクの炎の色の違い、ロウソクの燃焼に不可欠な酸素などなど。

 

ロウソクは、空気中にある酸素でロウを燃焼させる。ロウが燃えた後には、水と二酸化炭素を生成する。その水や二酸化炭素の働きや特性などなど。

 

呼吸と燃焼のシステムが似ているとも。目からウロコ。


小学校の理科の実験を思い出した。二酸化マンガンオキシドール過酸化水素水)を加え、水上置換法で酸素をぶくぶくと発生させる実験はびっくりした。
当時の子どもたちなら、さぞかし目を丸くしただろう。

 

この本では植物が光合成により二酸化炭素を吸収して酸素を排出することを述べている。木や草と私たちの連関性をこう述べている。

 

「このようにして私たちは、ただ仲間の生物だけでなく、すべて生きとし生けるもの同士の頼りあいをつくっているのであります。すべて造化は、一つの部分が他の部分の善として貢献するという法則によって、結びつけられているのであります」

科学の先人でもあるが、エコロジーの先人の一人と述べても過言ではないだろう。

 

話はもちろん、彼らの前で作者が行った数々の実験は、驚きや発見を通じて子どもたちの科学への好奇心を芽吹かせたことだろう。


ふと寺田寅彦の書くエッセイと視座が似ていると思った。

 

新訳で読みたい気もするが、「であります」調も古典っぽくてよいかもね。


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