蛇の目でお迎えこーわいな♪

 

 

『まほり』高田大介著を読む。

 

冒頭部は都会から転校してきた小学生・淳が渓流で目撃した少女とのシーン。
着物姿の彼女は流れに入って放尿する。
そのシーンがどうもつげ義春の『紅い花』のオマージュのように思える。
淳は少女と集落のことが気になり、MTBを走らせ個人的に調査を始める。

 

勝山裕は社会学を専攻している大学生。大学院に進む予定。
裕は同郷・上州の知り合いの知り合いの女性から土地にまつわる伝説や怪談を聞く。
懐かしさを覚えるが、とりわけ蛇の目が書かれた紙が護符のように貼り尽くされている村に学術的な興味を覚える。


蛇の目紋、二重丸、「西洋では蛇の眼は呪いをかける目」「日本では魔除け」
表と裏の関係。


その村にあるのが毛利神社。そして裕が幼い時に亡くなった母の旧姓が偶然、毛利。

彼は家を離れ戸籍を取り寄せはじめて母親と入籍していなかったことを知る。
父親に聞いても話してはくれない。
不仲となって家出同然に東京の大学へ進学、いまも父親とは絶好状態。

 

蛇の目の持つ意味、不気味さ。伊藤潤二の漫画『うずまき』 を思い出す。

 

裕のフィールドワークに強力な助っ人、同級生の香織が登場する。
彼女は「町の図書館司書の本採用前」で現在、非常勤のアルバイトをしている。
毛利神社についての貴重な古文書も取り寄せてくれる。

二人は香織の運転するクルマで調査に出かける。
時折、見かける少年。淳だった。

デビュー作とは「図書館」つながりだが、本作も「図書館」がキーとなっている。


古文書など資料の解説に紙幅が割かれている。
作者は作家でもあり研究者でもあるそうで語源や解釈など豊富な専門知識を惜しげもなく注ぐ。古文書の解釈をする研究者もポジティブな人からネガティブな人まで現われ、のたまわれる。各人のご説はごもっともと思わせる。
決してやさしくはないが、「民俗学ミステリ」の深みを増している。

 

裕と香織は次第に気持ちが通じ合う。

淳と裕&香織は、目的こそ異なり、当初誤解もあったが、結局、チームを組む。

着物姿の少女はその集落に幽閉されているのか。
虐待ではないのか。ひょっとしたら伝統的な神聖な儀式の生贄(サクリファイス)となるのか。村人の様子を伺っていた淳は、捕まる。
行方不明となって彼の母親はうろたえながら二人に連絡を取る。


まもなく儀式が履行される。慌てて救出に来る裕と香織。必死の脱出を試みる裕。

 

タイトルの『まほり』。これも解釈がころころ変わっていく。
最後に出た解釈。これが怖い。

『まほり』だとネタバレになるんで似た言葉で解釈の参考例。

 

「屠り(ほふり)」
「いわゆる生贄なども含め儀礼における祝いをあらわす「祝(はふり,ほふり,ほうり)」という語句と、「屠る(ほふる)」ないし「屠り(ほふり)」という語句は語源が同じという説もあり(喜田貞吉)[2]、もともとは犠牲を供して穢れ祓い清める役割の人物が行っていた。つまり神職及びそれに近い役割の人々が行っていたと思われる」出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より

 

こんな感じ。

淳が救出され、着物の少女も集落から出ることができた。めでたし、めでたし。
って、おいおい、ここで終わり?

 

裕が肌身離さず持っていた母親の義眼とは。
なぜ父親は母親の出自を、話してくれなかったのか。
続篇の期待を大いに抱かせつつ完となる。


清水崇のホラー映画や諸星大二郎の伝奇漫画が好きな人ならぜひ、ぜひ。

 

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