『怪談おくのほそ道』―松尾芭蕉殺人事件ではない

 

怪談おくのほそ道  現代語訳『芭蕉翁行脚怪談袋』

怪談おくのほそ道 現代語訳『芭蕉翁行脚怪談袋』

  • 発売日: 2016/05/26
  • メディア: 単行本
 

 

もののけの日本史 死霊、幽霊、妖怪の1000年』小山聡子著で知った本。

 

『怪談おくのほそ道-現代語訳『芭蕉翁行脚怪談袋』-』伊藤龍平訳・解説を読む。
もちろん松尾芭蕉が作者ではない。「作者不詳」だそうだ。

現代語訳は読みやすく、丁寧な解説を読むと理解度が増す。

 

松尾芭蕉と門人たちがそれぞれ旅に出て不可思議な体験をする。
怪談と括られているが、怖い話ばかりではなく、不思議な話、滑稽な話など
バラエティに富んでいる。

 

芭蕉や門人は俳句を詠んでさまよえる「亡霊を成仏させたり、悪人の心を改心させたり」する。道中「山賊や物盗り」に出くわしても芭蕉は機転をきかせてピンチを乗り越えたりもする。

 

「序」にこんな魅力的な一文がある。

 

「かの西行法師が、骨を集めて人を造ってみたことがあったが、その声は割れた笛を吹くようだったそうだ。人の形はしていても、五つ(アイウエオ)に声が分かれていないのは、反魂の法を疎かにしたからだろう」

 

「人造人間」じゃん。

 

ちょっとさわりだけを。

 

「第二話では狸が娘に化けている」

 

「第八話では狐が侍に化けている」

 

「第九話は化け猫の怨霊譚。亡き母が飼っていた猫が長兵衛が大切にしていた塩辛を食べてしまう。激高して猫を撲殺する。猫の祟りに遭う」

 

「第十七話は門人支考が『黒塚』の謡本を枕に寝ていたら悪夢を見る」

『黒塚』は「安達ケ原の鬼婆」として知られる。
小学生のとき、行った。鬼婆が住んでいたといわれる岩屋を見た。
巨大な松かさも見たような気がする。
芭蕉も訪れたが、俳句を詠んではいない。

 

「第二十話は門人其角が池の端のカキツバタで一句詠む。すると、美しい少女が現われ消え去った。旅籠の娘・お菊の幽霊だった。お菊はかつて投宿した美少年の辰之助に恋をする。しかし、出家する彼は袖にする。哀しみの挙句、池に落ちで亡くなる」

 

ええ話。


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