夏なんです

 

フランス怪談集 (河出文庫)

フランス怪談集 (河出文庫)

  • 発売日: 2020/04/04
  • メディア: 文庫
 

 

午前9時過ぎ。物干し台の鉢植えに水をやろうと
二階にある水道の蛇口をひねるとお湯が出る。
しばらく出しっぱなしにしておくと生温い水が出る。

 

伸び放題の庭木を切る気力もなく。
コロボックルかホビットが隠れているかもしれないし。

 

『フランス怪談集』日影丈吉編を読む。
怪談日和だし。ってこのところ年中、そうだけど。
以下短い感想メモ。

 

『死霊の恋』テオフィル・ゴーチェ著 田辺貞之助

牧師である主人公が、かつての激しい恋を回想する。
相手の女性(美貌で知られる遊女)はすでに亡くなっていた。
男のやりきれない気持ちにこたえてか
死霊となってあらわれる。生きていなくても会えればいい。
『牡丹灯籠』と似た話。二人はヴェネチアへ行って遊興三昧。
牧師の師が異変に気づき、女性の「遺骸」を暴いて「聖水をまいて」
「灌水器で棺桶の上に十字を切る」。ま、エクソシストですね。
吸血鬼である彼女は消えてしまう。「翌朝」彼に恨みつらみを述べて消えてしまった。
後悔する牧師。忘れられない運命の女性。

 

『イールのヴィーナス』プロスペール・メリメ著 杉捷夫訳

イールのお金持ちの家に招かれた「私」。そこでローマ時代のものと思われる
傑作のヴィーナス像を見せられる。お金持ちの息子の結婚式当日、ヴィーナス像を介在して悲惨な事件が起こる。発掘してはいけない像だったのか。呪いのヴィーナス。

 

木乃伊(ミイラ)つくる女』マルセル・シュオップ著 日影丈吉

アフリカ(「リビア」「エチオピア」あたり)の砂漠を歩く兄弟。
夕方、とある家に泊めてもらうことになる。
異文化に面食らうことばかり。これでもかと薄気味悪い描写が続く。
そこは「ミイラ作りの邑(むら)」だった。逃げ出そうとする。
助かったのは兄だった。弟は…。

 

『壁をぬける男』マルセル・エーメ著 山崎庸一郎訳

「登記局の三級職員」の男。生真面目で平凡そうに見えるが、
壁を通り抜ける能力がある。「次長」が代わってパラハラを受ける。
「倍返しだ」といわんばかりに特殊能力で報復する。
味をしめた男はしたい放題。何せ警察に捕まっても、拘置所に入れられても
すりぬけてしまうのだから。でも年貢の納め時がくる。

 

『代書人』ミシェル・ド・ゲルドロード著 酒井三喜訳

「私」は元修道院を訪ねるのが日課のようになっていた。
ふだんは施錠されていて中の素晴らしい美術品を見ることができるのは限られた人だった。
「私」はオーナーから鍵を渡されているのでいつでも入れた。庭園も素晴らしい。
礼拝堂がいまは年老いた「代書人」「ピラツス先生」のオフィスとなっている。
ただし蝋人形なのだが。だけど、確かに話をした。生きていると思われた代書人は。

 

人気blogランキング