GO TO トラブル

 

ラテンアメリカ怪談集 (河出文庫)

ラテンアメリカ怪談集 (河出文庫)

 

 『GO TO トラブル』って探偵小説にならないか。
舞台は「GOTO(後藤)探偵事務所」。
元刑事。妻子に追い出され、女性にだらしない。
仕事は一流。

 

ラテンアメリカ怪談集』鼓直編を読む。


未知のラテンアメリカ怪談沼にずぶずぶとはまりそう。
沈んでも抜け出ることができるのだろうか。

未知のラテンアメリカ怪談山脈。
トレッキングでいいから登ってみたい。
そこからの眺めはどんなだろう。

 

ルゴネス、ボルヘスコルタサル…。知らない作家の方が多い。
いろんな風味の怪奇小説幻想小説がラインアップ。
気にいった3篇を取りあげる。

 

『吸血鬼』ムヒカ・ライネス著(アルゼンチン) 木村榮一

「ロンドンのホラー映画会社」が、傑作のホラー映画をつくろうと
ホラー小説作家の女性をシナリオライターに起用する。
彼女はセットではなくロケで撮りたいと。
切り抜きから「中央ヨーロッパ」にある古城と屋敷をロケ先に選定する。
出迎えた男爵。まさに吸血鬼の風貌。
プロデューサーもシナリオライターも当代きっての吸血鬼俳優も
出演を依頼する。実は男爵は…。
素人なので演技はできない。しかし、相手役の女優に一目ぼれ。
撮影が進むにつれ、女優になんとなく生気がなくなってくる。
よく見ると喉元に2つの赤い虫刺されのような痕が。さては。

 

『波と暮らして』パス著(メキシコ) 井上義一訳

波に恋した男。波江とか波子とかじゃなくて正真正銘本物の波。
汽車の飲料水タンクに彼女を入れて連れ出す。
ひと悶着あったが、二人(?)は、ラブラブな暮しを始める。
シュールだけど、恋に溺れる。
しかし波なので海から離れた暮しは耐えられない。
男は部屋を懸命に海らしく演出するのだが。
ある日、男は部屋に女性を招く。しおらしかった波が一転、ジェラシーで高波に。
荒れる、荒れる。男がとった行動。波だから問題はないが、
生身の女性だとしたら、なんとも猟奇的な結末。

 

『ミスター・テイラー』モンテローソ著(グアテマラ) 井上義一訳
テイラーは諸事情によりボストンから行方をくらます。
「南米のアマゾン地方で原住民に混じって」暮らす。
一文無しの腹減らし。原住民にも見下されるほど。
密林で「人間の干し首」を売りつけられる。
文無しがわかったのか干し首をめぐんでもらう。
中南米の文化的産物」に興味のある「ニューヨークに住む叔父」に送った。
すると、すぐさま「5個」「10個」とオーダーが来る。
テイラーは原住民たちと干し首ビジネスを始める。
とはいえ干し首だけに在庫は潤沢ではない。
干し首バブルは「部族」間での紛争となる。
圧倒的な首不足。オチがすばらしい。
なんとなく筒井康隆のブラックユーモアの短篇を想像させる。

シュールなものとブラックなものが好きという
頑固一徹な好み。


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