出口なし

 

 

『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』チェーホフ著 浦雅春訳を読む。
あらすじのような、感想文のような。

『ワーニャ伯父さん』
大学教授に好きな学問に没頭してもらうため、甥であるワーニャと教授の先妻の娘・ソーニャは屋敷を守り、畑を耕し作物を育て経済的なサポートをしてきた。
先妻が亡くなった後、娘のような若くてきれいな女性を後添えにもらった教授。大学を退官し、屋敷に戻る。
大学を離れた田舎の暮しは退屈そのもの。
若い妻と老後をエンジョイしたいのか、屋敷や土地を売却すると言い出す。
途方に暮れるワーニャ伯父さん。嘆く伯父さん。結婚もしないで尽くした年月を返せと言わんばかり。
ともに苦労をしたけれども、伯父さんがずっと恋心を抱いているのは姪ではなく教授の後妻だった。
主治医も彼女に好意を抱いている。
伯父さんはワインに酔った勢いでコクってみるが、けんもほろろ。自殺も考えるが、それもできない。
終幕の姪・ソーニャの台詞。

「ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。―略―そしてあたしたちの最期がきたら、おとなしく死んでゆきましょう。―略―神様はあたしたちのことを憐れんでくださるわ。―略―そうしてようやく、あたしたち、ほっと息がつけるんだわ。―略―そうしたらあたしたち、息がつけるの!」

 救いようのない言葉。でも、本音なのだろう。

そこにチェーホフの醒めたリアルな視線を感じる。

訳者解説によると、改訂版では、ソーニャは不美人に設定が変えられたそうだ。

『三人姉妹』
父親が軍人で転勤で地方暮しとなった三人姉妹。
再び、モスクワでの都会暮らしを待ち望んでいる。
父親が亡くなってから火が消えたような家族。
長女・オリガは教師で独身。次女・マーシャは中学校の教師の妻。三女・イリーナは、堪能な語学を
活かせる仕事も田舎ではなく役所で働く。
父親つながりで軍人たちとは交流がある。
台詞の多さは、橋田寿賀子ほどではないが、昔流行ったTVのホームドラマのフォーマットだと思う。
ただし、明るい出口はない。岩屋に幽閉されたサンショウウオ状態。
具体性のないモスクワでの暮し。絵に描いた餅であっても、ないよりはまし。
向田邦子の暗い方のTVドラマと似たような人生のほろ苦さが味わえる。
だからいまだに毎年のように演じられているのだろうか。