「恐怖山脈」を登るのには

 

幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)

幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)

 

 『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』A.ブラックウッド他を読む。

 
選りすぐった13の怪奇短篇に
生田耕作との対談、エッセイ―・書評まで付いている。
巻末に載っている一番弟子の紀田順一郎のミニミニ評伝で
平井が「怪奇翻訳」の第一人者となるまでの生涯を知る。
「恐怖山脈」を登るのには格好のガイドブック。
 
ラブクラフトの『アウトサイダー
現代人の孤独があえて古めかしい文体で綴られている。
 
M・R・ジェイムズの『若者よ、笛吹かばわれ行かん』
抜群のうまさ。すううっと世界に入っていく。怖いけどなぜか笑える。
 
J・D・ベリスフォードの『のど斬り農場』
何度読んでもよくできている。鉄板の怪奇短篇。
 
シンシア・アスキスの『鎮魂歌』
端正つーかスタイリッシュなゴースト・ストーリー。
 
読んだのを覚えているのもあるが、忘れているものもある。
未読で気にいった作者は他の作品にどんなものがあるのかネットで調べる。
『恐怖の愉しみ』上・下をamazonの古本で買ったように、
再度古本で買ってもいいし。
 
平井訳の小泉八雲本は来年の愉しみにしよう。
 

「ともあれ、恐怖山脈は夏山によし、冬山によし。リュックはいらず、同伴者不要。遭難の心配なし。初心者はとかく下駄ばきで、もっと恐いの、もっと恐いのと、無謀なねだり方をする」

 

 
はは。その通り。にしても粋な言い回し。
ふと、平井の親族が経営しているうさぎ屋のどら焼きが無性に食べたくなった。