家族の肖像


トリエステの坂道』須賀敦子著を読んだ。
亡き夫の家族の肖像。
義父は鉄道員
ほんとにイタリア映画の『鉄道員』と重なる世界。

世渡り下手な義父。
払い下げの鉄道官舎に住む義母。
家具調度品から暮らしぶりまで
丹念に綴る。
つつましい暮らしの中で楽しむ術を知っているイタリアの人たち。
読んでいて子どもの頃を思い出した。
母の手編みのセーターを着せられていたとか。

義理の弟が遅い結婚をする。
早世した兄はできが良く、弟はドロップアウトした生き方を選んだ。
嫁はオーストリア国境の山村出身。チロル地方か。
結婚式に出られなかった作者は、
のちにその地を訪れ、もてなされる。
妻の父親が根っからの山男。
心は優しいが無愛想。
アルプスの少女ハイジ」のアルムおんじのように。
後年作者は気に入られたようで
美酒といわれる密造のグラッパをもらう。
これは飲みたいと思った。

義母が家庭菜園をやっていて
花やハーブなどを育てていた。
夫の存命中は懇願しても連れていってくれなかったが、
夫の死後、秘密の花園へ案内される。
完成度の高い作品。月並みなクリシェだが。

作者の書くものは、みな来し方の記。
なんだけど、生きることなどが
心の奥深いところにまで刺さる。

人気ブログランキング