エピゲノムと生命

エピゲノムと生命 (ブルーバックス)

エピゲノムと生命 (ブルーバックス)

前著『自己変革するDNA』が、きわめて知的刺激的内容だった。
迂闊にも、新著が発刊されたことを知らなかった。
『エピゲノムと生命』太田邦史著の感想メモ。
気になった、気にいった箇所を引用。

「DNAが生命のかなりの部分を決定している、という「生まれ」の呪縛にとらわれている人は多いと思います」

 

都合が悪いと、子は親のせいにするとか。


「実際には、生物のいろいろな性質は、DNAだけで決まっているのではなく、環境と生物との相互作用の中で決定され、それが細胞分裂や世代を超えて維持されるのです。「生まれ」という基盤が、「育ち」によって影響を受けながら、やがて固定的な表現型を生み出すと考えるのが、現在の生物学の常識となっています。」

 

「獲得形質は遺伝しない」というのが定説となっているが、
たとえば、『ドラえもん』のスネ夫一家を見ると、
でも、やはり、環境は人間形成、人格形成に影響していると思えてしまう。
アポステリオリは、大きいだろう。


「エピジェネティクスとは、そのような環境要因がDNAの使われ方にどう影響するか、ということを扱う学問なのです」「「DNAだけによらない遺伝のしくみ」取扱う分野」

 

のことだとか。その先達が、マクリントック女史だそうだ。


「分裂して生じる二つの娘細胞は遺伝子の変化に関して同等ではない。
分裂後、ある細胞では特定の遺伝子が活性化されるだろうし、別の遺伝子はそこにありながら不活性化される。このような活性化や不活性化は、遺伝子がクロマチン物質によって覆われているが故に生じる。遺伝子の活性化は、覆われていた遺伝子が露出したときのみ起こるだろう」


「この考えは現在のエピジェネティクスの基本的な考え方と全く同じです。(マクリントック女史が)60年以上も前に、このような考えに到達していたというのは、驚くべきことだと思います」

一卵性双生児は、DNAがまったく同じだが、成長すれにつれ、違ってくる。
作者はそれを「裸のDNA」を覆う「クロマチン構造」などを
「服」の例えで説明している。

エピゲノムは、「まったく同じDNAから眼や心臓など異なった細胞」

をつくる働きをしているとか。

 


「生命の本質が情報であるという考えを突き詰めると、生命情報の普遍的な物質基盤にも階層性が見えてきます」

レイヤーか。


「脳を持つ個体が集団をなして社会を作り、その中で言語や文化を生み出し、子孫にDNA以上の情報を伝えることが可能になりました。現代の人間社会では、さらに人間の外部に情報が拡張していきました」

ドーキンス言うところの、「生物は遺伝子の乗り物」を思い出す。


「エピゲノム修飾による遺伝子制御は、双方向性と分散性という観点から、(破壊と変化に強い)分散型情報通信に非常によく似た存在であると言えます」

「分散型情報通信」の代表例は、インターネットだが。

「社会学的な立場だけではなく、生物学的な立場からいっても、格差が異常に
拡大し、固定化するのは問題があると考えられます。それは、親に与えられた
環境影響が、エピゲノムの記憶を通じ世代を超えて継承されていく可能性が指摘
されはじめたからです」

流動化していかないからか。「拡張して」いかなくなるからか。
専門的な内容は飛ばして読んでも十分に刺激を受ける。

『自己変革するDNA』の感想メモ

 

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