化石は生きている―化石が記憶しているもの

 

 

『化石の分子生物学-生命進化の謎を解く-』更科功著を読む。


ジュラシック・パーク』。ぼくは映画版を見たが、コハクに閉じ込められた蚊の化石からDNAを取り出して恐竜を甦らせる話にはわくわくした。

 

化石の中にもDNAやタンパク質がある。「古代DNA」「化石タンパク質」と言うそうだが、これは「分子生物学の発展により」発見された。

 

この本では、多くの人が興味を抱くものをテーマに選んで「生命進化の謎」がどの程度まで解明できたかを述べている。

 

たとえば、絶滅したネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)との関係。
ネアンデルタール人=野蛮やまるっきり違う種という印象が強いが、どうやら違うらしい。「ネアンデルタール人の化石から取り出したDNAを使って決定したゲノム」と
「現生人のゲノムとを比較した」結果、「ネアンデルタール人はヨーロッパ人やアジア人とは、数十か所という多くの場所で同じ塩基をもっていたのだ」


たとえば、昔流行った縄文顔と弥生顔。
縄文顔は濃いソース顔。沖縄の琉球人と北海道のアイヌ人のルーツだとされていた。
一方、弥生顔はのっぺりとした醤油顔。朝鮮半島経由で大和人のルーツだと。で、縄文人の人骨から古代DNAで調べることにした。ここで貢献したのが、PCR*だった。

PCR?最近、よく聞く言葉。新型コロナウィルスを調べるPCR検査のPCR
「1980年代、PCRが発明され、分子生物学の世界では革命が起きた」と。
結果。縄文人は沖縄の琉球人と北海道のアイヌ人のルーツではないことが判明した。

 

たとえば、ルイ十七世の遺骨に関するうわさ。
「フランス国王ルイ十六世と王妃マリー・アントワネットの次男」に生まれた王子。
フランス革命後、「タンブル塔に幽閉され十歳で病死」した世界一不幸な王子。
ところが、遺骨は「替え玉」で王子は生き延びたと。これもきっちり最新の分子生物学により王子の遺骨であったことが立証された。それには末裔である「ルーマニア王妃アンナ・アントワネットと弟から血液と毛髪を提供してもらい分析した」とか。ミステリ―のような実話である。


ジュラシック・パーク』は現段階では、残念ながらフィクションの領域にあるようだ。


*PCRPCRはPolymerase Chain Reactionの略語で、意味はポリメラーゼ連鎖反応です。
ポリメラーゼは私たちの細胞の中で遺伝子(DNAあるいはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。ウイルスはとても小さいので、そのままでは通常の検査法をすり抜けてしまいますが、PCRでは特定のウイルスの遺伝子の一部を大量に複製させることによって、ウイルスの存在を検知することができるのです。
PCR検査とは? - 研究室 - チャイルドリサーチネットより

 

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