生命世界の非対称性―自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書)
- 作者: 黒田玲子
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 新書
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『生命世界の非対称性-自然はなぜアンバランスが好きか-』
黒田玲子著 を読む。
「私たちの右手と左手のように」「どうしても重ね合わせることができなくても、鏡に映せばもう一方の側になるものを、科学の言葉で「互いに鏡像関係にある」とよんでいる」
「鏡像関係」って、目にしてラカンの「鏡像段階論」を
思う人もいるだろう。
「私たちのからだが左右対称なので、私たちの使う家具もまた左右対称となっている。―略―左右対称なものを美しいと感じる美意識も昔から存在する。薔薇窓のある大聖堂などは、その代表的なものであろう」
「左右非対称のものが左右非対称のものとコンタクトするときには、コンタクトする相手が右手型か左手型かで差が生じる。一方、左右非対称のものが左右対称のものとコンタクトしても差が生じない」
「右手型と左手型による性質の違いは香りや味以外にもみられ、その差が
もっと顕著に現われる場合もある」
分子構造は同じなのに、異なる。その悪しき一例としてサリドマイドを挙げている。
「サリドマイドという薬にも右手型と左手型の区別がある。このうち一方のみが胎児に奇形を生じさせることが、動物実験によって示されている」
一卵性双生児は、遺伝子が同じだといわれているが、
はてさて「鏡像関係」なのだろうか。
「生物の外形を比べてみると、動物には鏡面をもった(左右対称)ものが多いのに対し、植物には左右対称のものはほとんどない。生物は球対象から回転対象を経て左右対称へと進化していったと思われるが、速やかに意のままに動く必要のある動物には左右対称が不可欠だった」
ところが、
「これまでに、生物界は、マクロな世界で見れば左右対称なものが多いのに、ミクロの世界で見てみると左右対称が全く崩れていることがわかった」
んで、
「自然界は本質的に左右非対称である」
自然界ばかりか
「宇宙も本質的に非対称である」
となると、左右対称って宇宙の視野からみれば何なの。
なぜ宇宙、自然界は非対称、アシンメトリーなの。
興味を持たれた方はこの本や類書に当たられたし。
わからないところは、多々、飛ばし読み。
ミクロからマクロまで生命世界を一気通貫するのは、
読んでいて心地よかった。
作者の生命、生物?の定義に感じ入った。
「一般には、エネルギーと物質の代謝をし、成長と増殖を行ない、次世代へ情報を伝え、かつ進化するものが生物であり、これらの特性を出すために部分が高度に組織化された全体をつくっているものが生物であるとしておこう」
ハードSFの一フレーズみたいだね。
骨太な、かつての新書らしい新書。