月の塵

月の塵 (講談社文庫)

月の塵 (講談社文庫)

気温はそんなに高くないが、湿度が高い。
くせっ毛がいつにもましてくるくる。
子どもなら可愛いが、いい歳こいたおっさんだと。


『月の塵』幸田文著を読む。なぜか作者のものを読む季節は暑い季節。
うなぎじゃないが、ダレそうな気分をしゃきっとさせたいために、
自然と手がのびるのだろうか。
作者の父上は幸田露伴
この父娘関係が、「巨人の星」の星一徹・飛雄馬を思わせるくらいスパルタで。
とはいっても文豪養成ギプスをはめて登校させたりはしないが。
掃除・炊事など家事を厳しくかつ合理的に指導を受ける。
ベタベタ可愛がり、何でもいうことを聞くだけが愛情じゃない。
この随筆を読むと、作者は美人でもなく
文才にも格別秀でたものはないようだと
踏んだ露伴が、せめて家事全般は人並みにこなせるようにという思いから
生じたものらしい。生母が亡くなったこともある。
んでもって驚くのは、露伴の家事の達人ぶり。
率先垂範するからいくら厳しくとも単なるパワハラとかそういう類ではなくて。
博覧強記はわかるが。


結果として不幸な結婚から子連れで出戻ってきた作者。
露伴の死後、露伴の娘から、一人立ちして作家になる。
長い助走だったかもしれないが、その間の経験が作家としての基礎になった。
旺盛な好奇心と行動力。
ぽつぽつ作品を発表するようになってからも、
突然、仲居として料理屋に住み込んだり。
その経験が『流れる』になるのだが。
最後には背負われてみた富士山の大沢崩れなど晩年は自然に興味を抱いていた。
斑鳩法輪寺三重塔の復元再建」には、実際に住み込み、
作業の手伝いもしたという。
妥協を許さない言葉の職人。
宮大工が寺社を建てるように、作者は小説や随筆をものした。
きわめて鋭い観察眼がどうも物理学者や数学者の達者な随筆にも
通じるものを感じる。


気持ちは変わらないが体力がついていかない。
少し前まではこなせたことが、できなくなる。
この最後の随筆集には老いについても綴られている。
参考にはなるが、まだ、早い。
映画化された『おとうと』では、岸恵子幸田文役を演じていた。
勝気で美人。ちゃきちゃきした東京弁。
どうもそのイメージをいまだに引きずっている。


あとは、自分用のメモ代わりに。
映像で見れなかった人のために。画像から歓声と球音が聞こえる。 
ほぼ日刊イトイ新聞-福島の特別な夏。#12 聖光学院対須賀川


『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』山本義隆著


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