追悼、ウノコー先生。さすがです

 

 

『姫君を喰う話-宇能鴻一郎傑作短編集』宇能鴻一郎著を読む。

 

宇能鴻一郎が亡くなった。ウノコー先生といえば、「あたし、〇〇なんです」など女性のモノローグで綴った、独特のウノコー文体でエロティシズムを表現、一世を風靡した。『むちむちぷりん』や『濡れて立つ』などタイトルも秀逸だった。

 

とはいえ、芥川賞受賞作家。ただのエロ小説作家ではなかった。谷崎潤一郎を筆頭に、性の描写がうまい作家は食の描写もうまい。逆か。と、本作を読んで感じ入る。以下、4篇をささっと紹介。

 

『姫君を喰う話』
評判のモツ焼き屋でレシピを堪能する「私」。まだ、生のレバ刺しが食えた頃。狭い店内で、いかつい男が割り込むように座る。男は、虚無僧だった。黙々と食べる。やがて男が話し出す。はじめはモツ料理の話だったが、正体を明かす。自分は「高貴な姫」を
警護する武者だったと。叶わぬ恋をした。雪の夜、姫を連れ出す。火の気のない炭焼き小屋に姫を置いて、食料などを調達に。戻ってくると余りの寒さに姫は亡くなっていた。嘆き悲しんだ男は、愛するあまり、姫を食べてしまう。

 

『鯨神』
芥川賞受賞作品。一言でいえばウノコー版『白鯨』。神と崇められている白い巨大な鯨を捕獲しようと命をかけて挑む若い「刃ザシ(銛師)」。ライバルは紀州の男。舞台は、和田浦。旧名、千倉町。現・南房総市。千倉は安西水丸の『青の時代』に描かれたことと浅井慎平の写真が展示された海岸美術館(いまは閉館)があって訪ねたことがある。海水浴場で知られる白浜。この地名は南紀白浜から黒潮に乗って辿り着いた漁師にちなんでいるとか。

 

『西洋祈りの女』
三重県のとあるひなびた山村に、髪はパーマネント、洋装にハイヒールの高身長の中年女性がバスから降りた。男の子と女の子を連れて。病に伏せている「村長の隠居」のために呼び寄せた祈祷師だった。なんでも「西洋の神様がのりうつって英語で宣託する」と。方々で「西洋祈り」は効き目があると噂になって村でもひっぱりだこ。盆踊り大会のスポンサーにもなった彼女。勝者の男が彼女に迫る。それを見守る青年団の男たち。霊性、失墜。このことで彼女と子どもは村を実質上の追放となる。そして。

 

『ズロース挽歌』
作家である「私」が手紙をもらう。差出人の住所は「拘置所病院」となっていた。話を聞いてほしいと。男は腎不全で余命いくばくか。面会に行くが、話すのもなんぎ。話はカセットテープに録音され届く。男は、ズロース及びブルーマアフェチだった。もういっちょう、女子学生フェチ。江戸川乱歩の『人間椅子』よろしく、椅子になって女子学生のズロースを感じたい。そんな妄想をしていた。電機会社でサラリーマンになったが、重い腎不全に罹る。死ぬ前に欲望を叶えたいと、女子学生を誘拐して自室に軟禁する。で、ズロースを彼女にはかせた。なぜか始まる、奇妙な同棲生活。男は焼かれた灰を女学校のグラウンドや汲み取り便所の壺に散灰してほしいと遺言を残すが。

 

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