『中村屋のボース― インド独立運動と近代日本のアジア主義』中島岳志著を読む。
パンとカリーで知られる新宿中村屋の婿殿となった亡命インド人過激派・ボースの数奇な一生。創業者夫人の相馬黒光は、ぼくが、中学生か高校生のとき、ポーラTV小説「パンとあこがれ」で確か宇都宮雅代が演じていた。そのアートサロン的存在は高村光太郎などの著作にも出てきて知っていたが、ボースは印象が薄かった。望郷の念にかられてなのか、カリーは、ボースがこしらえ、やがて中村屋の人気レシピとなった。
最初に働いていた広告制作会社が新宿に会って、ちょくちょく中村屋には通った。
インド独立運動の志士であったボースは、創業者の娘と結婚して、子どもをもうける。
日本に帰化してもなお、インド独立のためにプロパガンダ活動などに奮闘する。頭山満や玄洋社・黒龍会などの日本の右翼と一括りにするのではなく、ボースの行動を通して描かれると、インターナショナルな時代の空気が伝わってくる。
アジアの希望の星だった日本。しかし、それは裏切り、落胆、不信感に代わり、現在にいたる。
この本にも孫文が出てくるが、白金台にある八芳園は、かつて資本家・政治家の別邸で
そこに孫文をかくまっていた話を、仲居さんから聞いたことがある。取材場所は、離れだった。一面の緑。秘密の抜け道やら地下道がいまもあるのだろうか。
思想・主義ではなくて、母国のために頑張っている外国人が困っているならひと肌脱ごう。そういう気概の良さを感じてしまう篤志家が戦前にはいたのか。昭和は遠くなりにけり。
昼ご飯は、買い置きの中村屋のレトルトのカリーにしよう。