木枯らし1号

おばあさん (朝日文庫)

おばあさん (朝日文庫)


台風で大雨の翌日は木枯らしか。

『おばあさん』獅子文六著を読む。
主人公は「69歳」のおばあさん。
日本が第二次世界大戦に入る直前の頃。
東京・山の手というか近郊。
おばあさんとその子どもたち一家
起きるさまざまな出来事。
当時の世相や社会事情をうかがい知ることができる。

唐突だけど『サザエさん』の舟はいくつだろう。
調べたら52歳。波平は54歳だった。
今ならおばあさんと呼べない年齢。
今の69歳だって。

おばあさんがワンダーウーマンばりに活躍する。
早合点、勇み足もあったりするが、ご愛敬。
隠居の身ゆえ家事はしないが、
朝は早く目が覚める。
することがないのでラジオを聴く。
情報通になって、
つい知り合いあの男性を論破してしまったり。
長男、次男は立派に独立したが
末っ子の三男坊がふらふらしていて気がかり。
演劇青年なんだが。

楽しくて、笑えて、
読んだ後、何も残らない。
娯楽小説の典型のような一作。
だが、行間には反戦や反ファシズム
そこはかとなく漂っている。
小津というよりも
古いフランス映画の名作を思わせる。

人気ブログランキング