- 作者: 獅子文六
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2017/08/07
- メディア: 文庫
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台風で大雨の翌日は木枯らしか。
『おばあさん』獅子文六著を読む。
主人公は「69歳」のおばあさん。
日本が第二次世界大戦に入る直前の頃。
東京・山の手というか近郊。
おばあさんとその子どもたち一家に
起きるさまざまな出来事。
当時の世相や社会事情をうかがい知ることができる。
唐突だけど『サザエさん』の舟はいくつだろう。
調べたら52歳。波平は54歳だった。
今ならおばあさんと呼べない年齢。
今の69歳だって。
おばあさんがワンダーウーマンばりに活躍する。
早合点、勇み足もあったりするが、ご愛敬。
隠居の身ゆえ家事はしないが、
朝は早く目が覚める。
することがないのでラジオを聴く。
情報通になって、
つい知り合いあの男性を論破してしまったり。
長男、次男は立派に独立したが
末っ子の三男坊がふらふらしていて気がかり。
演劇青年なんだが。
楽しくて、笑えて、
読んだ後、何も残らない。
娯楽小説の典型のような一作。
だが、行間には反戦や反ファシズムが
そこはかとなく漂っている。
小津というよりも
古いフランス映画の名作を思わせる。