図書館から『新潮』2013年9月号を借りる。
お目当ては小山田浩子の『穴』。
期待して読んだが、なんだか普通の小説だった。
夫の転勤で実家の隣なる実家の両親が大家の二階家に
タダで住むことになった主婦の話。
それまでは、パートタイマーで時給でこき使われていたが、
仕事も辞め、穴の開いたような日々。
義理の両親や親族、近隣の人たちとの交流。
実際、彼女は穴に落ちる。
お、ここからシュールな展開かと思ったらそうでもなく。
『マルコヴィッチの穴』みたいな。
同じ題名の小説が色川武大の『小さな部屋・明日泣く』に収蔵されている。
こちらは元軍人の父親が、狂ったように家の周囲に穴を掘る。
戦時下、放校となった行き場のない息子(作者)ともども、
重たく、身につまされる話。
うちの猫は、二階の押入れのふすまをぶりぶりに破いて、
中に入って脱出を幾度となく試みている。
『ナルニア国物語』の入り口は、
チェストの引き出しだったと覚えているが、
猫もそう思ったのだろうか。