コンテンツとしての高齢者

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

『驚きの介護民俗学』六車由美著を読む。
かつて民俗学にとって、村落に入って高齢者から
個人史や、その土地の風習や伝説などを聞くことは、
貴重なネタ元だった。
で、いまは、村落じゃなくて、
いわゆる老人ホームがネタのお宝だと。
民俗学者から介護職へと転身した作者が、
入居者たちに、フィールドワークのごとく、
ルーティンワークの合間に、聞き書きをする。
そこには、意外な事実が隠されていたりする。
ふだんは、ろく受け答えしないような高齢者が、
小さいころの思い出や、親のこと、
自分の就いていた職業のことなどを語る。
中には、堰を切ったように話す人も。
柳田國男佐々木喜善から聞いた民話を『遠野物語』に
編纂したように、この本を書いた。
オーラルヒストリーは、よい聞き手がいなければ、
埋もれたままなのだから。
作者は、先輩のヘルパーから
「そんな話を聞いている暇はない、忙しくて」と
言われる。それも一理あるが。
長く生きてきた分だけ、歴史、事実、
コンテンツとして高齢者が魅力的なのは、確かだろう。


阿川佐和子著の『聞く力』が、ベストセラーになるのも、
聞いてもらいたい時代の一現象なのだろうか。。
鷲田清一著『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』も
一読をお勧めする。


友人から娘さんが結婚したというメールが来た。
仲間関係では、結婚が早い方で、
彼女が生まれた日もなんとなく覚えている。
もう四半世紀たったのか。
「花嫁の父」体験は、うるうるしたそうだ。


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