なんだ神田

小さな町 (大人の本棚)

小さな町 (大人の本棚)

朝イチでかつて手がけたPR誌の当該ページをスキャンして送る。
銀行に寄ってから神田まで。
地下鉄銀座線の神田駅地下街は、昔っからレトロだ。
万惣の出口から出て、ちょっと迷いつつ打ち合わせ先へ。
向かいの商店建築と思われるビルが崩落防止のネットで囲われていた。
見積競合だそうで、安いにこしたことはないが、
安すぎては儲からないという毎度のことで。
いくつになっても見積書くのが苦手で。
帰りは淡路町から神保町まで散歩する。


移動本は『小さな町』小山清著。何せ解説が堀江敏幸だもの、
それで手がするすると伸びた。
芥川賞候補になった「をぢさんの話」も良いが、
「離合」(師匠の太宰治が命名したそう)がしみる。
元左翼活動をして転向して古本屋を営んでいる女性と
新聞配達をしながら小説を細々と書いている男性との淡い恋。
二人の感情のすれ違い。ほぼ私小説なのだろう。
彼が住んでいた町は東京大空襲で喪失する。
戦後、夕張へ「炭鉱員」として働き、体を壊す。


『軋む社会』本田由紀著の鼎談者の一人、湯浅誠の発言がぴったしはまる。

「貧乏と貧困は違うというのが私の意見です。
お金がなくても豊かな人間関係を築いたり、しあわせに暮らしている
人はいくらでもいます」

「でも、そういった人間関係を含めた“溜め”がない人もいる。
金銭的な“溜め”(たとえば貯金)もないし、
人間関係の“溜め”(頼れる親族や友人)もない。−略−
そういった精神的な“溜め”を失っていくという状態が、
貧困ということだと思います」

「精神的な“溜め”」か。


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