風の強い日

酔郷譚

酔郷譚

風の強い日。図書館へ行く途中、2棟のマンションで引越しを目撃する。
そうか、もう移動の季節か。
先日、駅前の不動産屋で男子学生が数名、
物件を楽しそうに見ていたものな。


『酔郷譚』倉橋由美子著を読む。作者の遺作だそうで。
言葉自体は相変わらず硬質なんだけど、短いセンテンスで、
どんどん妖しい世界へ吸い込まれていく。
少ない言葉でよくもまあ深淵なる世界をつくれるものだ。
東西の幻想ネタがほどよく調合され、上質なカクテルのような作品。
友人に銀座の老舗のバーへ連れていかれて、
マティーニ1杯で、ふわふわしてしまった、そんな心持ち。
絵のモチーフになりそうなシーンが連続している。
遺作つながりで澁澤龍彦の『高丘親王航海記』をふと思い出した。
あちらは流離譚だけどね。
絵空事としての小説を堪能することができた。


初出が『サントリークォータリー』、どおりで。
Web連載なら、各編の巻末に、カクテルのレシピや
そのカクテルを飲ませてくれるバーの紹介とかすりゃいいいのに。
大きなお世話かもしれないけど。


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