ぬけられます

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)

ぬけられますか    私漫画家 滝田ゆう

ぬけられますか 私漫画家 滝田ゆう

子どもの中学の卒業式。
外は暑いほどなのに、会場の体育館はひんやり。
保育園のとき、同級生だったお父さんと短い挨拶を交わす。
成長するにつれ、感慨は薄れていく。そういうものなのだろう。


『日日の麺麭・風貌』小山清著を読む。
断腸亭日乗』で永井荷風が、独身男性は東京では暮らしにくい。
という一文を書いているが、小山の短篇もそうでありながら、
生きることの楽しさ、苦しさを淡々とユーモアを匂わせながら綴られている。
そうそう、こういうこと。これとてほんまもんの文学だろう。
吉原の郭内に生まれ育ち、キリスト教の洗礼を受ける。
勤務先での使い込みが露呈して服役。
服役後は、新聞配達員となり、創作活動にいそしむ。
縁あって太宰治の弟子となり、戦後は、夕張の炭鉱で働く。
しかし、体を壊す。その間、原稿がぽつぽつと売れ出すが、暮らしは厳しく。


同じ色街出身というと滝田ゆうがいたなと。
滝田は、玉の井出身か。
で、図書館に『ぬけられますか−私漫画家 滝田ゆう』校篠剛著があったので借りる。
元担当編集者が書いたもので、こちらも、いろいろ教えられる。
滝田ゆうは小学校低学年のとき、友人に感化され、
立ち読みしはじめた『ガロ』で知った。
立ち読みの主は、白戸三平。少年漫画誌でブレイクする前の水木しげるも作品を載せていた。
滝田ゆうも水木もダメだった。特に滝田の方が。
『赤線玉の井 ぬけられます』というヒントを出すと、日活ロマンポルノファンなら、
神代辰巳監督の『赤線ぬけられます』が口をつく。
しかし、滝田の玉の井の原風景は、東京大空襲前の玉の井だそうで、
映画のは、戦後−赤線廃止間際の玉の井で別物だったそうだ。


小山清ファンのブログ経由BOOKRIUM 本のある生活
小山原作の『落穂拾い』に滝田ゆうの挿絵が見ることができる。
この描線に辿り着くまで変遷があったようだが、いかんせん苦手。
土着的、陰翳礼賛っぽい日本的エロティシズムみたいなのも、
年取ったら好き、平気になるのかと思ったら、そうでもない。


人気blogランキングへ