早起きして子どもから回ってきた『蹴りたい背中』綿矢りさ著を読む。
『クロニクル』松浦寿輝著で松浦は「前作の『インストール』の方が疾走感があった」と
評しているが、確かにそうかもしれないが、へたれな男子の背中を見てると、
体育会系の女子ならずとも、蹴りを入れたくなる気分は分からないでもない。
ともかくひねたおっさんを最後まで読ませるのだから、才はあるのだろう。
上手な文章を書く人は山ほどいるが、おもしろい文章や話を書く人はそうはいないってことか。
女子更衣室のなんだか甘酸っぱいニオイと男子更衣室の汗と脂のニオイとか、
そんな遥か昔の光景がよみがえってきた。
『進化しすぎた脳』池谷裕二著の読書メモ part2
「もっとも原始的な人間の感情は「恐怖」。「恐怖」というものは、
動物の脳のなかに古くから存在した。「喜び」や「悲しみ」よりも
「恐怖」のほうが起源が古い。理由はわかるよね。動物は危険なものを
避けなければいけない。それは生死にかかわる重要な問題だ。
だからこそ、動物は「恐怖」という感情を進化の過程で最初に
つくり上げた。「恐怖」という感情を生み出すのは「扁桃体」という脳の場所」
電車でいうところのATSみたいなものか。はじめに恐怖ありき。
「動物相手に実験しているとわかるんだけど、下等な動物ほど記憶が正確でね、
つまり融通が利かない。しかも1回覚えた記憶はなかなか消えない」
「融通が利かない」というのは、応用が利かないってこと。
酔っ払うと、過去の栄光を決まって話し出すオヤジも下等生物か。
論旨のすり替え、ハイ、そうです。
「人間の脳では記憶はほかの動物に例を見ないほどあいまいでいい加減なんだけど、
それこそが人間の臨機応変な適応力の源にもなっているわけだ。
そのあいまい性を確保するために、脳は何をしているかというと、ものごとを
ゆっくり学習するようにしているんだよね。学習の速度がある程度遅いというのが
重要なの、特徴を抽出するために」
「あいまい」だから、省略だの、デフォルメだの、創造力を働かせることができる。
なるほど、こりゃすごい。あいまいな日本の私。