- 作者: 岩波書店編集部
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 新書
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何かあったら、連絡があるはずなのだが、便りの無いのは良い知らせ。
せっかく晴れたので昼食に豚骨味噌ラーメンをごちそうになって『バッテリーⅥ』を買う。
自転車で用足しした後は、つらつらと本を読む。
『翻訳家の仕事』岩波書店編集部編を読了。
「名訳者37人」のナンギな翻訳稼業に関するショートエッセイ。
なんつーか舞台裏ものというのか、内幕ものというのか、
はたまた、まかない飯のような、読んだ人だけちょっとトクするおいしい話が満載。
3つばかり、気になったところを紹介してみる。
「上手な訳だとか、名訳だとか言われる翻訳には、読む人を巻き込み、
陶酔させる何かがあるが、それは決してきれいな日本語だとか、読みやすい日本語
といった言葉で片付けられるものではない。
翻訳を進める訳者自身の中で、日本語が原文と共鳴してリズミカルに躍動しはじめる。
そうして訳された文章にはリズム、<うねり>が備わっていて、
読者を否応なく作品世界の中に引き込んでいく…」 木村榮一
<うねり>ってグルーブ、ノリのことだよね。確かに<うねり>がないと、
読み通すのが辛いこともある。そうなるまでが、本によって異なる。
「表現する段階ではぼくは創作者だ。−略−シャーマンに似ているとも思う。
−略−翻訳しているときはそんなことは意識しない。また優れた作品は意識させず、
ぼくを作品の世界に一気に入り込ませる。とはいえ、いつでもそんな作品に出会える
わけではない」 野谷文昭
「シャーマン」とは名言。糸井重里はかつて
「コピーライターは恐山のイタコのようなものだ」と言っていたのとおんなじ。
作者の魂が降霊してくるまでどのような儀式をするんだろう。
「リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』(藤本和子訳、河出書房新社)。
学生時代にこの本と出会っていかなかったら、今ごろはまちがいなく別の人生を
送っていたでしょう」 岸本佐知子
ブローティガンがかつてあんなに持てはやされたのは、ひとえに藤本和子の訳が
素晴らしかったからだ。ぼくも文体を真似てみたことがあるもの。