漂流か回遊か

決壊 (講談社文芸文庫)

決壊 (講談社文芸文庫)

小説が読みたくなって、小林信彦『決壊』を読む。
表題作と『パーティー』は、たぶんはじめて読む。
残りの作品もかつて読んだことはあるが、やはり文庫化にあたり、
「一部訂正」が加えられている。
ちと大げさにいえば、ミュージシャンでいうところのデジタルリマスター版である。


作者が40代に発表した珠玉の短編。
「珠玉」なんて常套句は、使いたくないんだけど、そうなんだから、仕方がない。


前にも書いたことがあるが、第二次アイヴィブームの洗礼を受けたぼくは
高校時代に『メンズクラブ』を買ったり、友人から借りて読んでいた。
そのとき、作者の弟であるイラストレーター小林泰彦に魅了された。
実の兄である作者を知るのは、それからまもなく予備校へ通っていた頃だ。


角川文庫で出ていた『オヨヨ大統領』シリーズや『冬の神話』などの文芸作品から、
晶文社から出ていた『日本の喜劇人』『世界の喜劇人』などサブカルシリーズの作品。
紀伊国屋ホールか新宿の小劇場か失念したが、
マルクス兄弟の上映会に作者がゲストで出たときも見に行った。


いま、読んでみて気がついたのは、自分の文体が小林信彦にいかに感化されていたかということ。
村上春樹がデビューしたときは、もうオトナだったから、感化まではいかなかった。
チクショーとは思ったけど。
ハタチ前の柔らかな脳細胞(か新皮質か前頭葉かは知らないが)は、ともかく盲愛状態だったんだ。
J.J.氏もか。


巻末の坪内祐三の解説に書いてあるとおり、早すぎたデビューの不幸ってのはある。
コンコンチキの頭のカタい先輩作家たちは、
作者のような元構成作家など芸能畑・広告畑の出身者を目の仇にしただろう。
ましてや作者の狙い・企みなどは、知るわけがない。


おかげで仕事がはかどってません(ってそれはまた別の話だろ)。
『決壊』、ファンならおなじみの葉山の住宅の話。
「栖(すみか)」を喪失した作者が栖を思いがけなく入手して
また手離してしまう、その屈折した喪失感がほろ苦く描かれており、しみる。


それからマグロの件。リンク切れになるんで、まんま引用。

「大衆マグロ」も高級品に?メバチもキハダも削減勧告

(読売新聞 - 11月20日 14:40)
 中西部太平洋海域のマグロ資源を管理する国際機関である中西部太平洋まぐろ
類委員会(WCPFC)の科学委員会が、メバチマグロの総漁獲量を25%削減
するよう勧告していることが20日、明らかになった。

 キハダマグロについても10%の漁獲量削減を勧告した。
 ミナミマグロやクロマグロなどの高級マグロだけでなく、メバチやキハダなど
消費量の多い「普及型」のマグロも漁獲量が制限される可能性が出てきた。
制限されれば、日本で多く消費される普及型マグロの値上がりにつながる恐れも
ある。

 同委員会は、12月10日からサモアで開く年次会合で漁獲枠の削減などに
ついて協議する方針だ。この海域でのメバチマグロの漁獲量は2001〜04
年の平均で約9万トンで、このうち日本の漁獲は約3万トンを占める。キハダ
マグロは約42万トンのうち日本の漁獲は約5万トンだ。」

これって、裏でアメリカ産牛肉関係者が糸ひいているという陰謀説は如何?
闇マグロや密輸トロだのが横行して、高級寿司店は地下に潜る。
ネットオークションじゃトロ詐欺が流行り、クロマグロにつられて女高生が援交したりして。
おっと、ネコ缶はどーなるんだニャン。愛猫党よ、立ち上がる日は案外近いかもよ。


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