ブランドは「生き物」

ブランド進化論

ブランド進化論

『ブランド進化論』山田敦郎著の雑駁な読書メモ

○老舗の企業もあれば、新興の企業もある。生き馬の目を抜く企業もあれば、
凋落の一途の企業もある。企業が「生き物」ならば、ブランドもまた「生き物」である。

○本書では、さまざまな企業のブランドにおける進化の過程別に取材を重ね、
丁寧なルポルタージュにまとめている。

○タイトルに「進化論」とつけているが、ある日突然(企業にとっては突然ではないのだが)
ヒット商品が出る。それにより、ブランドはもとより企業体まで変わってしまう。
あとづけでよく『○○ヒットの秘密』などの本が出るが、
それを読んだとてヒット商品は生み出せない。
マーケティングで分析はできても、モノはつくれないのも、そのあたりにある。

○この本にも出て来る、アサヒスーパードライ(個人的には好きくないが)。
それをかつて山田理英*は、「CIビール」と論じており、うまいこというなと感心した。
雑誌『ブレーン』だったと記憶している。誠文堂新光社時代の。
企業がカンフル剤的にCIやBIを導入するのが、バブル期に流行ったことがあるが、
社名をカタカナにしたり、ロゴマークを変えるのが、CIやBIではないことは言うまでもない。

○沈んでいたアサヒビールが復活したのは、工場の現場と営業が一体となったわけで
それこそが「CIビール」の由縁なわけで。TQCやQC、カイゼンの成果ともいえる。
スーパードライ発売当時、スキーに凝っていたが、上越や東北のスキー場の売店や
最寄り駅のキオスクが見事なまでにスーパードライ一色には閉口したが、
裏には営業マンの努力があったのだろう。

○ブランドは何も製品力のみじゃない。たとえば、トラブル時の営業所や
コールセンターの対応から製品マニュアル、Webなど、
一切が包含されてブランドになる。

○最もひかれたのは製薬会社ノヴァルティス社のブランディング
薬でも、医家向けがメインゆえ、BtoBでいいと。
「万人に知られる必要はない」という選択をしていること。

「本当に伝えるべき相手に相手に本質を伝える。ブランドとステークホルダーとの
relevance(適切な関係性)を醸成することができている」

○知る人ぞ知る戦略で、異論はない。素晴らしいが、やはり知らない人にも知らせたいことが
必要になる場合もある。特に、リクルート関係。
だから、若い人におもねったようなBtoCコミニュケーションを展開しているが、
年増の若作りという感が否めない。しかし、人事担当者の話を伺ったところによると、
意外とTVCMで見たことのある企業に流れていくそうだ。

○で、本書に取り上げられているエアバスのBtoCtoBコミニュケーションが参考になる。
エアバスの知名度、内容認知度を高めるには、「Cを入れる」ことだと。

「Cとは一般消費者だけを指すのではなく、ビジネス客も含む。−略−
一個人として飛行機を体験し、それがビジネスの関係性に反映されていく」

「そうすることによって、機能的価値を主に伝えるBtoBコミニュケーションの表現や手法も、
もっと自由な広がりが生れる。それはBtoC的な感情や好みに訴えかけるコミュニケーションだ」

○この本の装丁なんだけど、格調高く、いかにもなんだけど、思い切ってポップにして、
就活中の学生も対象にしてみてはと思う。

参考:「広告月報 」2月号  特集 認知心理学からみた読者の心を動かす広告表現 アートディレクター 山田理英氏


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