止まらない

 

完全・犯罪 (創元推理文庫)

完全・犯罪 (創元推理文庫)

  • 作者:小林 泰三
  • 発売日: 2012/07/28
  • メディア: 文庫
 

 

くしゃみが止まらない、はなみずが止まらない。
小林泰三本も止まらない。

駒沢公園の桜はちょっとだけ咲いていた。


『完全・犯罪』小林泰三著を読む。

ミステリ―&ホラー&SF小説の名手による5つの短編。

 

『完全・犯罪』
画期的な発明や発見は先行者優位(最初に名乗った人が勝ち)だが、同じような研究をしている人は他にもいるはず。「タイムトラベル理論」で「物理学賞受賞」の水海月博士。悔しがる時空博士。時空博士は「実験データ」を試みようとして結局出遅れてしまった。恨み骨髄。タイムマシンを使って水海月博士を殺す完全犯罪を目論む。おなじみのタイムパラドックス。これがややこしくて。うまくいくどころか、ドタバタ、ジタバタ、カオスとなる。


『ロイス殺し』
「カナダの奥地にある未開の村」。ゴーダン・クロス(元の名はアルフレッド・モスバウム)。ロイスは素行が悪く村の嫌われ者だった。恋人のマリーが犯され、殺される。ロイスの仕業だと、なぜか亡くなったマリーが伝える。彼はロイスへの復讐を誓う。ギャングになってその機を伺っていた。巧みな罠を仕掛ける。ついにロイスは縊死した。彼のアリバイは完璧。完全犯罪は成立か。しかし、悔やむアルフレッド。慰めるマリー。

 

『双生児』
双生児の小説というと村上春樹の『風の歌を聴け』やスティーヴン・キングの『シャイニング』が浮かぶ。双生児の「真帆」と「嘉穂」は、小さい頃からお互いになりすましごっこをしていた。なんでも仲良く共有していた。しかし恋人だけはシェアできなかった。ぼくも双子の女の子とつきあったことがある。自宅に電話をかけたら、てっきり彼女が出たと思って話したら、姉か妹の方だった。声はそっくりだった。

 

『隠れ鬼』
隠れんぼをしていて隠れたまま行方不明、神隠しに遭った子ども。というのは都市伝説の一つだが。「出張帰り」に桜庭貞二は電車の待ち時間があるので河川敷を散歩する。ホームレスと思われるブルーシートハウスから鋭い視線を感じる。突如、男が現われ貞二を追いかける。わけのわからないまま逃げる貞二。男は子どもの頃『隠れ鬼』をして消えた山田中だった。大人になっても、まだ『隠れ鬼』は終わっていなかった。オチが鮮やか。


『ドッキリチューブ』
TVでおなじみのドッキリ。実は仕掛け人が仕掛けられていた逆ドッキリなどがあるが、
ここではTVではなくネット番組でオンエアするドッキリ。それが半端ない設定で過剰演出。制作会社スタッフと経営者がだまし、だまされ。さらに過激に。たとえ殺されても最後に「ドッキリ」というプラカードを出せば許される気がしてくる。

 

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