ヒガン前にイーガン

 

 

『ビット・プレイヤー』グレッグ・イーガン著 山岸真編・訳を読む。

グレッグ・イーガンは長篇と短篇を何作か読んだことがある。
圧倒されて「すげえ!すげえ!」と平伏するのみ。ちゃんとしたレビューには至らず。

で、「イーガンの日本オリジナル短篇集」である本作。
短篇ばっか読んでいる今日この頃、久しぶりに読んでみることにした。

 

『七色覚』
色覚インプラントに「虹アプリ」をDLして「脳の視覚経路」が変調を来たし、見え方が変わったぼくたち。それは進化なのか。メリットがあるのか。

 

不気味の谷
人気シナリオライターだった老人のアンドロイドが主役。老人が亡くなり、遺産は自分にそっくりな(「人格と記憶」を持った)アンドロイドに。彼はセルフアイデンティを求めて苦悶する。本筋よりもロボットやアンドロイドが遺産相続人になれるのかに興味を覚えた。


『ビット・プレイヤー』
「大災厄」により地球の「重力が横向き、中心にむけてではなく、東に引っぱるようになった」。解せないガーサーは、サグレダに質問を浴びせる。ネタバレしてしまうが、実はそこは「ゲーム世界」だった。オンライン・ゲームのビット・プレイヤー(端役)たちのアドベンチャー・ストーリー。『あつまれ どうぶつの森』とかの世界でアバターを実写体験したらこんな感じなのかな。

 

『失われた大陸』
難民問題をテーマにしたタイム・トラベラーもの。収容所や「警官隊と抗議者集団」とのバトル、催涙ガス…。少年アリに感情移入してしまった。なんとも救いようのない結末。

 

『鰐乗り』

「銀河系を覆いつくしている」「融合世界(アマルガム)」と「融合世界(アマルガム)」よりも前から存在する「孤高世界(アルーフ)」

 

 宇宙を長い間旅している夫婦は死を考え始めた。未踏の地である「孤高世界(アルーフ)」に行こうとするが。

 

『孤児惑星』

「太陽を持たない惑星タルーラ」。「少なくとも十億年間は宇宙の孤児としてなににもつなぎとめられることなく銀河系内を漂流してきた」

タルーラ人は存在するのか。文明はあったのか。タルーラを実際に探索するアザールとクローン人間のシェルマ。次々と謎が明かされる。一方で新たな謎が生まれる。

 

すごいけど面白い。中篇だから話がダレることもなく、一気に読み切れる。喰わず嫌いの人は、この本から読めばいいかも。

 

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