- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: ペーパーバック
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高名で内容の一部を知ってつい、読んだ気になった本がある。
『1984年』もその一冊。
新訳版で『1984年』ジョージ・オーウェル著 高橋和久訳を読む。
「1949年に刊行された」作品。
第二次世界大戦後の米ソ冷戦状態、共産主義の台頭、
原子爆弾…。
監視化社会を予測したといわれる「ビッグ・ブラザー支配下にある1984年の社会」。
「全体主義」ゆえプライバシーなどはない。
有名な「テレスクリーン」は双方向性のデジタル・サイネージを予測したとか。
昼間は役所で「歴史の改竄」にあたる。
しかし、個人の自由をひそかに望む主人公。
社食でランチ。ジンを飲む。
イギリスっぽい。
ジンは労働者の酒。
ミルクよりも安いので赤ん坊にも飲ませたとか。
ちょくちょく見かける女性から
メモをこっそり渡される。逆ナンでした。
ありとあらゆるところに設置された監視カメラの目を
かいくぐってデートする。
見つかれば粛清される。
もっとまじめな堅い内容だと思ったら、
結構、切ないラブストーリー。
ある日、禁書とされている、たぶん、幻の本を手に入れる。
『寡頭政集散主義の理論と実践』エマニュエル・ゴールドスタイン。
作者はこれを言いたかったのかもしれない。
でも読みやすくするために小説で糖衣した。
密やかな情事は、筒抜けだったのだろうか。
主人公は拘束、肉体的な痛み、精神的な痛みを体験しながら
マインドコントロールされていく。
彼が言われたことば。
「20世紀になってから、全体主義者が登場した。ナチス・ドイツにロシア共産党だ。ロシア共産党は異端者に対して、かつての異端審問官以上に残酷な迫害を加えた。―略―犠牲者を公開処刑に送る前に、周到に準備して犠牲者の尊厳を打ち砕こうとした」
実際、このようなことを行われる。
「全体主義」というと人間が量産される製品をイメージする。
基準に合わないものは不良品ではじかれる。
良識とプライドは引き裂かれる。
やがて
「二足す二は五である」
とマジ思うようになる。
主人公は復職する。
偶然、恋人と再会する。
お互いに相手を売ったと思い、気まずい空気。
彼女は反体制者を捕獲するために近づいてきたかもしれないし。
「彼は今、<ビッグ・ブラザー>を愛していた」
結びの一行が哀しい。
いま読むからこそ胸に迫るものがあるのだろう。
トマス・ピンチョンの解説が秀逸。
ピンチョンの小説よりもずうううっとわかりやすい。
Nineteen Eighty-Four - Official Trailer [HD]
Youtubeから映画版『1984年』の予告編を紹介。
なかなかよくできている。