彼女たちはドローンを歌声で操る

 

 

『芥子はミツバチを抱き』 藍内友紀著を読む。

 

日本と南アフリカのダブルの少年イェリコ。日本の小学校でいじめにあって不登校児となる。このところ、VRドローンレースに夢中になっている。イスタンブールのレースで彼のドローンが制御不能となって爆弾テロに使われてしまった。ドローンの持ち主はイェリコゆえ犯人と疑われる。彼の顔も日本中に知られ、母の遠い親戚というマルグッドと日本を脱出する。

 

行く先はミャンマーとタイの国境地帯。「黄金の三角地帯」にあるのどかな村。一面、鮮やかな芥子(ケシ)の花。世界最大級のアヘン(麻薬)の栽培地だった。彼は芥子を育てる少女リィ・レイと知り合う。そしてドローンを自らの歌声で制御する「ミツバチ」と呼ばれるノーンとプロイとも。貧困にあえいでいた子もいた。紛争で心に深い傷を負った子もいた。ドローン爆弾の被害者である彼女たちは世界の平和のためにミツバチとなった。ミツバチたちは、幼い頃、脳に生体コンピュータを埋め込まれ、制御されている。
彼女たちを支えているのが世界的な組織、ヒエムス。実態は謎。マルグッドもその一員らしい。

 

ミツバチたちはドローンで村を攻撃をする。目的は悪の資金源となっているアヘンの完全焼却。

 

イェリコは旅を続ける。トルコから巨大なコンテナ船で南アフリカへ。ミツバチ候補生とともに。旅先で起こるさまざまな出来事。それを経験して成長していく。お尋ね者となったイスタンブールのテロ事件の深層も詳らかになっていく。終盤になってヒエムスの実態が明らかになる。運営資金を犯罪組織からも受けていた。純粋な気持ちを踏みにじられたミツバチは怒りの針を刺す。

 

ロシアのウクライナ侵攻でも両国ともドローンによる爆撃を行っている。ドローン(Drone)って、ミツバチのオスだったんだ。疑問、氷解。

 

ミツバチの働きバチはメスで、オスはもっぱら種馬ならぬ種蜂の役割だそうだ。あ、余談。


ここに登場する少女や少年たちの現実世界や大人への憤懣や葛藤、諦観などが入り混じった思い。TVアニメーション機動戦士ガンダム 水星の魔女』にもつながるものがある。

 

表紙のイラストレーション、1枚絵が小説の世界を集約していて、創造力をふくらませてくれる。

 

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