「苦取(くとる)大明神」を信奉していた中須磨家で起きた連続殺人事件。怪談作家が呪われた謎に挑む

赤虫村の怪談

テレビの2時間ドラマ風の見出し。

 

『赤虫村の怪談』大島清昭著を読む。

 

愛媛県の草深い山中にある赤虫村。ここは、妖怪譚の宝庫。まるで岩手県の遠野のように。民俗学者で妖怪を研究している者にとっては、憧れの地かも。呻木叫子(うめききょうこ)もその一人。かつて民俗学を研究していたが、いまは怪談作家となって全国の怪談を蒐集している。

 

作者が「幽霊・妖怪の研究者」でもあるから、その蘊蓄が素晴らしい。さらにオリジナルの妖怪たちのネーミングと特徴や得意技に妖怪好きでなくてもつい引き込まれる。

 

廃寺に出る顔無しの「無有(ないある)」。黄色い雨合羽が目印。強風を呼び出す「蓮太(はすた)」。あらわれれば火事を起こす「九頭火(くとうか)」。

 

この村の名家である中須磨家は、「苦取(くとる)大明神」を信奉していた。くとる、クトゥルフラブクラフトのオマージュかーい。この手では個人的に津原泰水の『芦屋家の崩壊』が秀逸だと思っていたが。実際、無有たちが目撃されているのだが。

 

んでもって中須磨家の家族が、おどろおどろしい連続殺人事件に巻き込まれる。髪の毛をかきむしってフケを飛ばしながら金田一耕助が謎に挑む。って感じで呻木叫子が事件に当たる。助手は温泉旅館の娘・女子高生の金剛満瑠。

 

だけど、呻木叫子たちの推理は当たらず、事件はなかなか進展しない。地元警察もお手上げか。そこへ呻木の大学の同級生でいまは映像制作会社のディレクターをしている鰐口が参上。直観力に優れているのか、霊感なのか、手がかりを見つけ出す。「こんなんじゃないっすか」という口調で。ハーフらしい鰐口。不思議キャラ。

 

呻木と鰐口、バディものとしてシリーズ化するのかなあ

 

ホラーとして特に妖怪好きにはたまらないが、ミステリーとしてたとえば密室殺人の推理とかは、ちと弱い気がする。それにしても呻木叫子(うめききょうこ)という名前はすごい。

 

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