青春の蹉跌

湖の男

湖の男

 

『湖の男』アーナルデュル・インドリダソン著を読む。
アイスランドレイキャビク警察署、
捜査官エーレンデュルシリーズの最新翻訳。
涸れた湖のそこにあった
「白骨死体とくくりつけられたソ連製の盗聴器」。
死体は誰なのか。

東西冷戦の頃、
共産主義の洗礼を受けアイスランドからドイツ・ライプツィヒ
留学した若者。大学で出会った同朋、仲間。恋人。
その過去と今が交互にシンクロしていく。

エーレンデュルは、いつものように執拗に不器用に
事件の核心に迫ろうとする。
崩壊した彼の家族。娘と息子の再会。
お互いに手をのばそうとはするが、タイミングが合わない。
現在の恋人との関係も。老いらくの恋というのは失礼か。

共産主義にあんなにカブレていたのに、
理想と現実はかなり違っていた。
結局は「東ドイツ共産党」のスパイ、手先、一分子扱い。
純粋な気持ちはねじまげられる。

ソ連以下ヨーロッパの共産主義国家は崩壊したが、
共産主義者は素性を隠して生きなければならない。
旧制高校ではマルクスボーイだったが、
いまは大企業の経営者のように
若気の至りと軽々しく口外したくはない。
死体は誰なのか。

ちょうど良いほろ苦さ。

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