それゆけ、ジャーヴィス

 

 


『魂に息づく科学-ドーキンスの反ポピュリズム宣言-』リチャード・ドーキンス著 大田直子訳を読む。

 

論考からエッセイやスピーチ原稿などさまざまなものを一冊にまとめた本。
言うなれば、リチャード・ドーキンス バラエティブックス。


気になったところをだらだらと。

 

ダーウィンよりダーウィン主義的」―ダーウィンとウォレスの論文

 

進化論といえばダーウィン。異を唱える人からは目の敵にされているが。
実は同じころ、ウォレスもほぼ同じ論考をまとめていた。
もしウォレスが先には発表していれば
進化論はウォレス主義となっていたかもしれない。
あ、これはこの本には関係ない話。

 

「普遍的ダーウィン主義

 

進化のメカニズムには

「適応的複雑性を説明すること―略―「デザイナー」か、あるいはデザイナーの仕事をする自然淘汰のようなものを必要とするという点だ」

 

作者は「分子進化の中立説」の提唱者、木村資生の説を引用、まとめている。

「個体群中の遺伝子頻度の変化―略―の大部分は、自然淘汰によって起こるのではなく、中立的であるという点で、彼はおそらく正しかったのだろう。新しい突然変異が個体群で優位を占めるのは、それが有利だからではなく、ランダムな浮動のせいである」

 

ランダム、偶然ってこと。認めながらも、「ダーウィンの法則」の「普遍性」を支持する。

 

分子進化の中立説 ~木村資生と中立説
https://www.nig.ac.jp/museum/evolution/01_c.html


ジャーヴィス系統樹

これはドーキンスの真骨頂。
P.G.ウッドハウスの『ジーヴス』のパロディ。
執事ジーヴスならぬジャーヴィスと主人のやりとりで
インテリジェントデザインを支持する人たちの進化論批判を揶揄している。

 

主人「なあ、ジャーヴィス、答えてくれ。もしぼくらがチンパンジーの子孫なら、なぜ、いまもチンパンジーがいるんだい?―略―なぜみんなドレッグス・クラブ(それか好みによっては科学アカデミー)のメンバーに変わっていないんだ?」

 

動物園のサルは一向に人間に進化しないではないか。
人間の先祖がサルとは許せない。人は神がつくりたもうた。
ジャーヴィスはとどめを刺す。

 

「わたくしたちは現代の魚と祖先が共通しているのでございます。
―略―ですから、わたくしたちは魚の子孫だと言って差し支えありません」

 

「50年先―魂を殺す」

 

「19世紀半ばにダーウィン神秘主義の「デザイン論」を
打ち壊したように、20世紀にワトソンとクリックが遺伝子に関する
神秘主義のナンセンスをすべて打ち壊したように、21世紀半ばの
後継者たちは、魂が体から離脱するという神秘主義の不条理を
打ち壊すだろう。それは容易ではない」

 

「容易ではないが」「ダーウィンのような一人の天才」の出現か
神経科学者とコンピューター科学者と科学通の哲学者の連合」が
可能にすると。

 

さて、どうなるのだろう。


硬軟取り混ぜてがその手の本の魅力だが、あえてケチをつけるならば
フラットに編集してあるので読むと違和感を覚える。


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