活字は浮上するのか

 

浮上せよと活字は言う (平凡社ライブラリー)

浮上せよと活字は言う (平凡社ライブラリー)

 

 

橋本治追悼ではないが、
何か読みたくなって本棚を漁ると
『浮上せよと活字は言う』が出てきた。

 

桃尻娘』もあったはずだが、神隠しに会ったのか。
ギャルモノローグという文体が新しかった。

 

『浮上せよと活字は言う』は、硬派な論考集。
意外に思われるかもしれないが。

 

2か所、ふれてみる。

 

「活字離れというのは、活字文化という閉鎖的なムラ社会
起こった過疎化現象だ」


なんという慧眼。
ぼくが思うに「活字離れ」とは、若者が堅い本を読まないで
マンガや雑誌にうつつを抜かすオヤジの嘆き。
「いまどきの若者は~」と似ている。
有史以来言われてきた常套句。

 

雑誌『POPEYE』をその象徴に挙げている。
大学時代の愛読書でした。
前にもブログに書いたが、
ナイキのコルテッツレザーとフーコーの『狂気の歴史』を
天秤にかけてナイキを選んだ俺なのさ。

 

「雑誌の時代」は、「単行本の売れ行き不振」で
「雑誌に活路を見出した」。
いまや雑誌も売れない。
「活字離れ」か。

文字、テキストはネットで読まれるようになった。
単行本離れ、雑誌離れ。
しかもタダで。

 

「閉鎖的なムラ社会」をこう述べている。

 

「この国では―略―「機構の変革」というものが起こらない。
政治改革も官庁の統廃合も、既得権の喪失という事態を危ぶむ
人間達によって阻止される」

 

未来永劫、変わらないような気がする。残念だが。

 

「この国の変革は、そのウミを決して出さない。
ウミを持った部分をそのままにし、新しい補助器具を
与えることによって治療を終えたとするヘボ医者のように、
日本の機構改革は、決して古いものを切り捨てない」

 

うわべだけのリフォーム、リニューアル。
雑誌もそうだったと。

 

名刀のような切れ味。


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