植物系 即仏系

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)

 

菜食主義者』ハン・ガン著 きむ ふな訳を読む。
菜食主義者』『蒙古斑』『木の花火』からなる連作集。
主人公の女性はある日、肉を受けつけなくなる。

菜食主義者』は妻の異変を夫の立場から書いてある。
夫は儒教的というか立身出世タイプのビジネスマンの典型。
結婚当初からエキセントリックな妻の行状に辟易気味。
肉食を拒む妻。幼児の好き嫌いをなくそうと
無理やり食べさせようとする父親。
妻の抵抗。軋む精神。

蒙古斑』は義妹の異変を義兄の視点から書いてある。
義兄は売れないアーティスト。
姉は単身で化粧品店をはじめ繁盛させた経営者。
義兄は義妹に花のボディペインティングを施しビデオ映像に収める。
彼女にはいまだ蒙古斑がある。
実業家の妻とは格差婚。頭が上がらない。
義妹には前々から好感ばかりか性欲も。
ボディペインティングを施した義兄と義妹。
一線を越える。妻に逢瀬を発見される。

『木の花火』は妹の異変を姉のアングルからとらえている。
裏切られたが、精神病院に入院している妹を
献身的にサポートする。
植物人間ではなく植物になろうとする妹。
治療や食事を拒否する。
病気は絶対治さなければならないものなのだろうか。
本当に主人公は病に罹っているのだろうか。
植物=即身仏になろうとしているように思える。

読み終えて、かなり切なくなった。
きゅんきゅんきた。
村上春樹の『ノルウェイの森』のような。
 堀辰雄ジブリの『風立ちぬ』のような。
カフカの『変身』の主人公グレゴール・ザムザじゃん。
病をテーマにした文学。
心の危うさ、脆さ、伝わらない気持ち。
決して癒されることはないのに、なぜか癒される。
空気感が加藤秀行あたりにもつながる。
K文学にはまりそうな予感。

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