ベリーベリーブラッドベリ―日本オリジナル初期短篇集

 

黒いカーニバル (ハヤカワ文庫SF)

黒いカーニバル (ハヤカワ文庫SF)

 

 『黒いカーニバル』レイ・ブラッドベリ著 伊藤典夫訳を読む。
初期の作品集。ファンタジックなSF作家の巨人と思われるが、この本には奇想的なものとホラー的なものとSF的なものが混在している。初出誌がパルプマガジンウィアード・テールズ』から知的ファッション誌『エスクァイア』まで。とはいえ、どの作品も見事なまでにブラッドベリ印。

 

気にいったものを手短かに紹介しよう。

 

「黒い観覧車」
カーニバルの会場にある観覧車。なぜか乗ると若返ったり、老いたりするという不思議な観覧車。観覧車が止まって「黒いシートにすわっているもの」は。ブラッドベリ・ワールド、全開。


「ほほえむ人びと」
「グレッピング氏」含めて一家5人揃っての夕食が始まろうとする時に、誰かがドアをノックする。無視すると警察官が突入する。彼が見た光景は。オチがとてつもなく怖い。う、うまい。


「刺青の男」
全身に刺青を施した男。その刺青はまさに見世物に値するものだった。男は腕利きの老婆の刺青師に、さらに新しい刺青を頼む。盲目の刺青師の刺青には過去も未来の絵がある。新しい刺青を彫ってもらったが、それを「布と絆創膏」で隠す。「見てはいけないよ」と。うっかり絆創膏がはがれてしまった。刺青に異変が。そこに描かれたものは。

 

「みずうみ」
ネムーンで子ども時代を過ごした町を訪ねる。「わたし」は12歳の時に「愛していた」少女・タリイを湖で亡くす。再び湖畔に立つ。長年見つからなかったタリイが発見される。狼狽する。偶然ではない。途切れていたタリイへの思いが強く甦る。目の前に
いる妻は、もはや「見知らぬ女」だった。

 

「巻貝」
病気で外遊びができないジョニイ・ビショップ。ママは貝殻を耳にあてると海の音が聞こえると巻貝を渡す。海の音が聞こえるとジョニィは大喜び。本物の海で遊ぶことを切望する。パパの夏休みに海へ行くことになった。待ちきれないジョニィ。ママが部屋に来るとジョニィがいない。光る巻貝。耳をあてると、潮騒と元気な子どもの歓声が。

 

「戦争ごっこ
本作と「バーン!おまえは死んだ!」は双子のような作品。主人公はジョニ―・クワイア、見かけは若者なんだけど、心は10歳の子どものまんま。兵士となって本物の戦場で命がけで戦うのに、彼は戦争ごっこをしている感じで映画「マトリックス」のように
敵方ドイツ軍の弾丸をひょいとかわす、当たらない。


「バーン!おまえは死んだ!」
イタリアで戦うジョニ―・クワイア。なぜ弾丸をよけることができるのか。兵士たちは不思議に思う。メルター歩兵は秘訣を聞く。無謀にもそれを試す。オーマイゴッド!ジョニ―たまには戦争ごっこで負傷したいと「ケチャップの壜」を要求する。血の代用品に。

 

「児童公園」
妻を亡くした「チャールズ・アンダーヒル氏」。妻の妹が息子・ジムを「児童公園」に連れていくという。氏が「児童公園」の前を通ると呼びかけられる。しかも子ども時代の呼び名で。公園で悪い連中と遊ぶことを案ずる氏。夕食後、子どもと散歩に出て公園の前を通る。公園内では誰かが楽しげに遊んでいる。父子は公園内に入る。得体の知れない者たちは。

 

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