- 作者: シャロン・バーチュマグレイン,冨永星
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2013/10/23
- メディア: 単行本
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『異端の統計学 ベイズ』シャロン・バーチュ・マグマクレイン著を読む。
メンデルの法則のメンデルも牧師だったが、
この当時、学者として食っていくのは至難だったそう。
王立アカデミーは、超狭き門でたぶんコネや金がないと入れなかったんだろう。
で、牧師となって研究を続けて行く、二足のワラジ。
いま風に言えばWワークか。
ところが、
「「ベイズの法則」を完成させたのは、フランスの数学者 ピエール=シモン・ラプラス」。
もちろん二人に面識はなく、ラプラスは「独力でこの法則を発見した」。
「「何かに関する最初の考えを、新たに得られた客観的情報に基づいて更新すると、
それまでとは異なった、より質の高い意見が得られる」
これが、ベイズの法則。
これを詳しく説明している箇所を引用。
「ベイズのシステムは、概念としては単純だ。客観的な情報を得て自分の意見を変えるだけのことで、つまり「当初の考え+最近得られた客観的なデータ=より正確な新たな考え」、と表すことができる」
「やがて、この手法の各部分には名前がつけられ、当初情報がない時点で考えた確率を「事前確率」、観察された客観的データに基づく仮説の確率を「尤度(ゆうど)」、客観データよって更新された確率を「事後確率」と呼ぶようになった」
「これは進化するシステムで、新たな情報が加わるたびに確信へと近づいていく」
しかし、
「厳密で客観的な答えを求める学者や研究者たちは、こんなものは主観的で役に立たぬと葬り去った」
伝統的な「頻度主義」統計学から見れば、ベイズ統計学は、
きわもの、トンデモ科学的扱いだったそうだ。
専門家からは忌み嫌われていたが、
実際、いろんな現場では、経験知として、「ベイズの法則」の概念は支持され、
それが「ベイズの法則」であるとは、知らずに、改良されていった。
功績は枚挙に暇がないが、
「第二次世界大戦下、アラン・チューリングがベイズの法則を発展させて、エニグマと呼ばれるドイツ海軍の暗号を解いた」
連合国の勝利の一因は、「ベイズの法則」にあったとは。
知らなんだ。
また
「原子力発電所の安全性を調べたり」
「喫煙が肺がんを引き起こすこと」や、
「コンピュータ・サイエンスや人工知能や機械学習、ウォールストリートや、天文学や物理学、安全保障省やマイクロソフトやグーグルにまでベイズの法則が浸透している」
「ベイズの法則」の歴史や役割を知りたい人には、うってつけ。
身近なところでは、テレビの視聴率や選挙の出口調査。
これは無作為抽出により少ない母数で実際の数値に近いデータが得ることができると
されているが、これも、「ベイズの法則」。
蛇足。
でも、朝日新聞とサンケイ新聞で同じテーマで無作為抽出によりアンケートを
実施すると、大抵、その新聞のカラーにそった結果になりがちだと思うんだけど、不思議。