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ハンナのいない10月は

ハンナのいない10月は

  • 作者:相川英輔
  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: 単行本
 

 

『ハンナのいない10月は』相川英輔著を読む。
ミステリー風味の短篇連作集。

 

ハンナは正徳大学の森川先生の研究室で飼われている猫の名前。
森川先生は学内での出世には興味がない。

ユニークな授業で一部の学生にはウケている。

 

少子化の時代、大学も今後の入学者確保には頭を痛めている。
正徳大学では何者かが潜入してスパイ活動をしていて不審な事件が続く。
学長以下正体を突き止めようとする。なぜかそこに森川もメンバー入りする。

 

意外にも名探偵ぶりを発揮する森川。
といっても凄惨な事件は起こらず、ほんわかとした読後感。こんな内容。

 

『ひとつがふたつに』
就活で単位不足となった佐藤。担当教員の森川に単位取得をお願いに行く。
すると、クイズに当たったら単位をあげると言われる。

 

ポルトガルの言い伝え』
研究室で猫を飼っていることに抗議に来た小山庶務課長。そのとき、停電となる。
数日後、富川学長が訪れる。猫好きの学長は「内部犯」による「学内機密の漏えい」を
話す。停電も関連しているのか。捜査の手伝いを依頼する。

 

自治会選挙と夜の星』
この大学は自治会活動が活発。学生自治会長選挙では現会長と対立候補が競り合っている。選挙後、不正があったという噂が。真相の解明に当たる。

 

『化石』
森川が行きつけの定食屋。妻を亡くし意気消沈した店主。時間が止まった化石のような食堂。森川が同僚や学生たちを連れてくる。にぎやかな雰囲気。止まった時間が再び動き出す。

 

『激しい雨が降る』
自治会長に選ばれた仲の「私服が盗まれる」。前会長の三田村も同じ目にあった。
悪い悪戯か事件か。防犯カメラをチェックすると。

 

『ハンナのいない10月は』
森川に「出席不足者に単位を与えた」というゴシップが流れる。炎上した彼は大学を
辞めることを考えるが。騒動の合間に研究室から姿を消したハンナ。はたして見つかるのか。

 

大学を舞台にしたミステリーというと奥泉光の『桑潟幸一准教授』シリーズがあるが、
トーンとしては北村薫の『空飛ぶ馬』あたりかな。

 

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