疑似家族においても子は鎹(かすがい)になるのか

 

 

イエスの学校時代

イエスの学校時代

 

 『イエスの学校時代』J・M・クッツェー著 鴻巣友希子訳を読む。
『イエスの幼子時代』の続篇。

 

巻頭の引用が利いている。

「一説によれば、後篇がうまくいった例しはない。
ドン・キホーテ』後篇第四章」

父親役のシモン、母親役のイネス、子ども役のダビード
犬のボリバルは、わけあって逃げ延びて農園で働くことになる。
好奇心旺盛な6歳のダビードはシモンに鋭い質問する。
例えばダビードには本当の両親がいない。だから孤児だと。
シモンはみな過去をリセットしてこの国に移ってきた。
血は繋がっていないが一家として暮している。ゆえに孤児ではないと。

 

ビードの教育のために家庭教師をつけるが、うまくいかない。
「農園のオーナー」からダンスアカデミーを紹介される。

独特の教育理念に疑惑を抱くシモンだが、行かせることにする。
農園から学校までは距離があり、再び街へ。

 

シモンは生活費を稼ぐためにポスティングの仕事に就く。
イネスは「ブティックの販売員」になる。

ダンスアカデミーに寮があることを知ったダビード
「寄宿生」を申し出る。言ったらきかないダビードは、寮住まいを始める。

 

子どもがいないと二人の関係がぎくしゃくし出す。
つーか家族であっても夫婦の関係はない。
特にイネスはマヌカンの仕事にやりがいを見出したし。
突飛な発言や行動に出る子どもを育てるよりは楽しいかもと。

結局、離れて暮らすことになる。


ダンスアカデミーを切り盛りしている美しいアナ・マグダレーナ。
アカデミーの「美術館の主任美術館員」ドミトリー。寄宿舎?
この二人が後半のいわば主役といってもよいだろう。

 

ビードはダンスの才能があるらしく、アナ・マグダレーナや
ドミトリーとも仲良しだった。

ドミトリーはシモンと同様ブルーカラー出身らしく
実直なシモンに同じニオイを感じる。

 

アナは恋の火遊び相手とドミトリーを見ているが、
ドミトリーはガチだった。

やがて不幸な事件が起きる。
殺人犯となったドミトリー。能弁。それをなぜかかばうダビード。能弁。
結果的にかくまうシモン。寡黙。
原罪とは、贖(あがな)いとはをなんか考えさせられる。

 

シモンはバラバラになりそうな家族をまとめるために奮闘する。
シモンはつらいよ。

疑似家族においても子は鎹(かすがい)になるのか。

 

てなことで『イエスの死』へとつづく。
まさか、ダビードが。早く日本語版を読みたい。

 

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