メス男

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

『開かせていただき光栄です』皆川博子著を読んだ。
著者のミステリーには和物・洋物があるが、
ぼくが読んだことがあるのは洋物の方の数作。
ミステリーにユーモアや当時の世相背景がたっぴりと仕込んであって堪能した。
イブリン・ウォーやP.G.ウッドハウスなど英国ユーモアものが
好きな人なら、ぜひ。
漫画化するなら、坂田靖子以外思いつかない。


で、巻末の参考文献に挙げられていたのが
『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』ウェンディ・ムーア著。
なになに、『ドリトル先生』のモデル、
住まいが『ジキル博士とハイド氏』にインスピレーションを与えた。
だって。


ジョン・ハンターは学問が苦手だったとか。
徹底して現場の人、臨床の人である。
腕のいい外科医。
外科医はいまも執刀や縫合などにスキル、技術が求められるようだが。
現代は「The Knife Man」、意訳して「メス男」。
ハサミ男」のパロディではない。
学が無いわけではないと思うが、
解剖して見えたものが真実なのだ。徹底したリアリストだったのかもしれない。
最初は年齢の離れた権威主義の兄のアシスタント。
いわば汚れ役。黒子役。
死体の調達もしていたとは。
自宅が動物園と博物館と死体処理場と研究所を兼ねていた。


さまざまな動物の解剖・観察・研究を通して
進化論的考えを持っていたそうな。
何もダーウィンばっかじゃなくて。
ダーウィンも苦節何年の進化論を危うくアルフレッド・ウォーレスに
発表を先をされそうになった。


可愛がっていた弟子が、ジェンナー。そう、種痘の。
ジョン・ハンターも淋病と梅毒の研究で自身を実験台にしたとか。
サブストーリーも満載の楽しい評伝。
事実は小説よりも奇なり。を地でいく。
ジョン・ハンターのコレクションがハンテリアン博物館で見ることができる。
ロンドンに行ったら、訪れたい。
「せめては新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん」状態。


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