キット勝つト

チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書)

チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書)

昨日の午後、テスト原稿を送る。
お気に召すか、召さないか。


朝の仕事から帰った足で妻と近所のスーパーマーケットへ行く。
節電でエスカレーターは止まり、蛍光灯を消された薄暗い店内。
米とインスタントラーメン以外は、ほぼ揃っていた。
カートをかかえたお年寄りは、行き来が大変そう。
足の具合が良くない妻も、エスカレーターが停止して
ナンギしている。


『チョコレートの世界史』武田尚子著を読む。

出先での校正や原稿直しが長時間に及ぶことがある。
何か食べに行く時間は惜しいが、小腹が空く。
そんなときは、バッグにしのばせといたチョコレートをかじる。
キットカット系がぼくの好みなのだが。

「アステカ王国」で「インディオ」たちがつくっていたカカオ。
それがヨーロッパに伝わり、はじめは王侯貴族の薬や高級な嗜好品。
創意工夫を重ねられて、カカオがおなじみのガーナをはじめ
ヨーロッパの植民地だった国々栽培され収穫量も増え、
ココアとチョコレートになってブレイクダウンしていく。

「キットカットが誕生するひと時代前には、仕事に向かう
エネルギーをアップさせたいとき、手にするものはアルコールだった。
二十世紀前半の欧米社会では、ワーキング・クラス男性が労働のために
朝からアルコールを手にすることは見慣れた光景だった」

「アルコールへの耽溺は、労働者の身体や意欲を損なうだけではない。
アルコール常習者は工場を休みがちになる。工場の欠勤率が高まり、
向上経営社を悩ませる。社会的にも、血糖値を上昇させる他の手段が
必要だった」

確かロンドンあたりじゃミルクよりもジンの方が価格が安く、
赤ん坊にジンを飲ませていたような…。

「十九世紀に技術改良に熱心に取り組み、良質のココアを
販売して名を馳せ、イギリスを代表するココア・チョコレートメーカーに
成長していったのが、フライ家、キャドバリー家、ロウントリー家である」
「いずれも」敬虔な「クエーカー教徒」だった。

キットカットは、そもロウントリー社が開発したものだそうだ。

労働者のファストフードだったキットカットが、
子どものおやつになり、「キット勝つト」という語呂合わせが
ゲンかつぎになって極東の地・日本の受験生のお守りになろうとは
夢にも思わなかったろうな。


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