思案暮れる

失敗の愛国心 (よりみちパン!セ 34)

失敗の愛国心 (よりみちパン!セ 34)


どうしたものかと、
思案に明け暮れる今日この頃。


『失敗の愛国心』鈴木邦男著を読む。
新右翼などといわれる作者の著書は、はじめて読む。
いきなり、右翼は存在しないみたいなことを述べる。
左翼はいた。しかし、愛国主義者は自分たちは中道、右なんかじゃなくて真ん中にいた、
いるつもりだったそうだ。
母親が生長の家の信者で、高校は仙台のミッションスクール。
ささいなことで卒業延期となり、結果、一浪して早稲田大学へ。
大学の下見の際、数寄屋橋で演説をしていた赤尾敏を知り、日本愛国党をたずねる。
当時は、猫も杓子も左翼全盛時代。
そんな時代の風潮に反発して右翼となる。
山口二矢三島由紀夫の事件など、
作者の個人的右翼体験は、もう一つのこの国の歩みをあぶりだしている。
体育会の学生とともにスト破りをしたそうだが、
もし、当時の早稲田が右翼一色だったら、
ひょっとしたら左翼運動に、最初は入ったかもしれない。


「愛国心とは、その言葉にある通り「心」のことだ。
だから各自の心の中にしまっておけばいい。
大声で言い合うものだはないし、その大きさをくらべるものではない。
誰かに強制されるものでもない。実は、僕だって最近そう思うようになった。
以前は、強制してでも「愛国心教育」をすべきだと思っていた。
また、この国のためなら命をかけるのは当然だ、
国のことを考えない人間は許せない、と思っていた」

たとえば漢字や九九は半ば強制的でも覚えさせるべきだろう。それと愛国心は違うのか。
「三つ子の魂百まで」なんだから、刷り込みで日の丸の旗を振らせ、「君が代」を暗唱させよう。
それはいけないことなのか。でも「誰かに強制されるものでもない」。矛盾。疑問。


人には左翼的な部分と右翼的な部分が両方ある。というのも、そうだなと思う。
その人々の振り子の揺れみたいなものが、やがて時代の空気になるのだろう。
ティーン対象に書かれている「よりみちパン!セ」シリーズの一冊。
とてもわかりやすく書かれており、作者の率直な物言いには賛同する箇所もしばしば。


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