風が強い日

 

風が強い日。
洗濯物は乾くが、花粉が大量飛散。


いつもの仕事から派生した新規の仕事。
まずは、書くためのネタの仕込み。

 

いま、読んでいる本。

『ミス・ブロウディの青春』ミュリエル・スパーク著 岡照雄訳。
代表作なのか。
『その人は女教師』という古い東宝映画タイトルを流用する予定。
スパークの本、まだ翻訳されていないのがある。
図書館の保存庫に眠る昔の本も読もうか、どうか。

 

『魂に息づく科学』リチャード・ドーキンス著 太田直子訳。
ドーキンスの反ポピュリズム宣言」という勇ましい副題がついている。
利己的な遺伝子』にKOされてから読み続けている。
いつものレトリックが、たまらない。

 

大阪府の知事と市長のダブル選挙、
ロシアのプーチンとメドヴェージェフの
大統領と首相のポスト交換を思い出す。

 

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『言葉人形』にしてやろうか

 

 

花粉症→鼻をかむ→強くかみ過ぎる→鼻血の悪循環。

 

『言葉人形』ジェフリー・フォード著 谷垣暁美編訳を読む。


編訳者による「短篇傑作選」。
「編訳者あとがき」を読むと、
作品は発表順に降順。
「現実的なものから幻想的なものへとグラデーションをなす配列」
になっているそうだ。

 

13の短篇。幻想小説とカテゴライズできるが、
バリエーションに富んでいる。
目のつけどころと発想量が、すごい。
どれが良いかは、まあ個人の好みで分かれるだろう。
お気に入りを3篇あげるなら、こんな感じ。

 

『ファンタジー作家の助手』
タイトル通り、求人広告でファンタジー作家の助手になった女性。
仕事は作品に破たんや矛盾がないかをチェックする仕事。
校閲にちょっと似ている。
ある日、白いワニ状態(by江口寿史)になった作家。
未完の作品の展開や結末のアイデアを依頼される。
すると作家のそばには小説のキャラたちが現われる。
自分たちの役割や扱いに不満があるのか、
作品に厳しい指摘を。
小説のキャラたちが作家を出し抜いてストーリーを改変したら。
小説のキャラたちが他の作家へのトレードを申し出たら。
ふくらむ妄想。


『私の分身は私の分身ではありません』
なぜかみな自分の分身がいて、分身は独立して働いている。
住まいも別だ。見た目はコピーだからそっくりだが、
性格は違うようだ。
一卵性双生児で生まれたが、異なる環境で育つと性格が異なるように。
なぜか分身にも分身が存在する。
分身は分身の分身が気に入らない。
本人に相談する。
近親憎悪。ややこしや。それが妙。

 

『言葉人形』
作家である私がふと気がついた「言葉人形博物館」。
うらぶれた佇まい。老婆が館長。
そもそも「言葉人形」は「野良仕事」にこき使われる子どもたちの息抜き。
愛玩用に開発されたもの。
なんだけど、人形職人や言葉人形の描写が
フェティッシュ、不気味な人形愛にあふれている。
その一体がもたらした惨劇。
チャッキー人形かよ。
でなきゃ、黒いドラえもん

 

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暗号通貨vs.国家 感想-2

 

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 『暗号通貨vs.国家 ビットコインは終わらない』坂井豊著を読む。

第6章「正社員は減ってないし、会社は無くならないし、電子化はそう進んでいない」が直接、暗号通貨とは関連していないが、大事なテーマを扱っていて
なるほどと思ったので感想-2にまとめた。

 

 

いま、話題の「総務省統計局の労働力調査」によると意外なことに

「正規社員は増えている」それ以上に「非正規社員が増えている」。

増えた分、減ったところがあるのだが、それは「自営業者」だと。
確かに近所の小売店がバタバタと閉店ガラガラ状態だしな。

 

働き方改革」は、正規、非正規の賃金格差を縮めることも狙いの一つだが。
本業はアーティストやフリーランス
何時間か何日かのシフトで非正規として働いて生活費を補填する。
本当に非正規社員の待遇が良くなるのか。

自分の好きなことを仕事にして過不足なく暮らしていける。
これが「働き方改革」だと思うんだけど。

 

次がAI。作者は、こう述べている。

産業革命以降、繰り返されてきた「機械化が失業を生む」というフレーズの現代的な言いかえに過ぎない」


大騒ぎすなと。
だって人間は有史以来非力化を家畜を利用したり、「道具」を発明して
生産性や効率性をあげていまに至る。
AIが得意なところはAIに任せればいい。
シンギュラリティは杞憂なのだろうか。

 

最後に「ロースキル労働者」。
高度プロフェッショナルの反対語。
ゆくゆくは移民層がメインになるのかもしれないが、
彼らが、権利を主張する案として作者が挙げているのが

労働組合を作って賃上げ交渉をする」


ということ。
マルクスのゾンビ?いや、マジで。

恰好の例でフランスの「黄色いベスト運動」を取りあげている。

「リーダーがおらず、―略―P2PネットワークのSNSで広まった」


暗号通貨と同じ分散システムだと。
あ、つながっていたのか。

一人より団体。
魚篇に弱いと書く鰯。
一匹では弱いイワシが群れで泳ぐ絵が浮かんだ。


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『暗号通貨vs.国家』 感想-1

 

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 

『暗号通貨vs.国家 ビットコインは終わらない』坂井豊著を読む。

ビットコインバブルで「億り人」になった人がいて話題になった。
でも、バブルははじけてしまった。

 

ビットコインなど暗号通貨は「あやしくない」「面白いものだ」と
作者は言う。

 

この手の話は枚挙に暇がない。
陸蒸気と呼ばれる蒸気機関車は当初、機関車からの火の粉で家が火事になるなどと
忌み嫌われた。

 

インターネットの広告費がTVCMの広告費を抜くことが確実になった今も
ネットはいかがわしい。あてにならない。と思われている人も少なくないだろう。
でもそういう姿勢はネットだろうがマスメディアだろうが必要だけど。

この本は投機商品じゃなくて新しい通貨としての暗号通貨の魅力や可能性が書かれている。

 

「マイナー」でもある作者は自らの実体験を通してブロックチェーン
良し悪しを考察する。

 

暗号通貨に至るまでの流れが紹介されているが、多数決が活用されている。
フランスの数学者コンドルセの「陪審定理」を引きつつ、

陪審員3人のうち2人が有罪と判断するなら、全体として有罪と判断する。コンドルセは、多数派の判断のほうが、正しい確率が高いからそうすればよいという」

ビットコインには「陪審定理」が反映されていると。

 

ビットコインが出てからビットコインの課題を克服してより良い暗号通貨を目指して
新たな暗号通貨が分岐してきた。
生物が大爆発したカンブリア紀みたいに。
これはビットコインオープンソースだったから。
このあたりのツリー図は、ふと新興宗教や日本の学生運動のそれと似ていると思った。

 

暗号通貨が反政府、 反中央銀行を実現するとアナーキーに叫んでいるわけではない。
しかしもし

ビットコインが主流となった経済では、国家が発行するお金に大した価値はない。戦費が調達できないと、戦争はできない。」


想像するだに愉快。
暗号通貨はP2P

「国家に過度に集中した力を世のなかに分散させていくものだ。―略―
近代社会が国家に押し付けすぎた負担を、少し軽くしようということだ」

 

ビットコインバブルで「億り人」が出たと書いたが、
現在暗号通貨の利益は、最高税率55%の総合課税だから
きちんと確定申告している人は半分以上を納税しなければならない。
実質半「億り人」。FXと同等の20%の分離課税を。
というのも普及には必要だろう。

 

ビットコインの創造主サトシ・ナカモトの論文が日本語で読める。
日本語で読むビットコイン原論文 [by Satoshi Nakamoto]
https://coincheck.blog/292

 

ここから始まった。

 

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きみは天然ショック

 

天然知能 (講談社選書メチエ)

天然知能 (講談社選書メチエ)

 

 


『天然知能』郡司ペギオ幸夫著を読む。

 

著者の本は特に初期のものが難解で。
でも、きっと大事なことを言っていると個人的に思って
わからないまま、時には丸呑みした。

 

最近は、かなりわかりやすい文体になったが、
でも、わからないところはわからない。
でも、言いたいことはそれなりに賛同できる。

 

さて、『天然知能』だ。
養殖ものではなく天然ものの脳の話かと思ったら、違った。
「あの人は天然だから」と言うが、それに似ているのかな。


AI(人工知能)vs人間の脳(自然知能)みたいな二項対立がにぎやかだが、
作者はここに、天然知能を提唱する。

 

「三人称的知性=自然知能、一人称的知性=人工知能
「一.五人称的知性=天然知性」

 

だそうだ。

 

「一.五人称とは、「あなた」に対面する「わたし」のことです。「あなた」自身ならそれは二人称ということになります。しかし、今問題にしているのは、飽くまで、あなたと向き合っている「わたし」なのです。」

 

禅問答のようだが。あれか、これか。ではなくて、第三極をもってきて
煮詰まる状態を乗り切ること。「あなたと向き合う「わたし」」。

 

「私たち天然知能は、向こう側感を持って世界を認識しているのです。視界の外に、見えぬものの存在を確信できる。私たちの知覚や感覚は、むしろこのように、単独の感覚の外部を伴って、成立するものではないでしょうか」

 

外部があるから内部がある。

 

作者は「一人称的知性=人工知能」を「ユクスキュルの環世界」と言っている。
自己完結した世界。ネット用語で流行った島宇宙とかタコツボ化も同義だろう。


ミラーニューロンが天然知能に重要な役割を果しているかもしれないと。

 

ミラーニューロンは、「いま・ここ」で知覚されている行為が違っていても、その目的が同じなら活動すること、完結した行為よりむしろ未完結で曖昧な行為に対して活動すること、などがわかってきたのです」

 

すげ。

関連して。

 

ミラーニューロンの発見』マルコ・イアコボーニ著のレビュー
http://soneakira.hatenablog.com/entry/20090721

 

『脳のなかの天使』V・S・ラマチャンドラン著のレビュー
http://soneakira.hatenablog.com/entry/20130706

 

「ダサカッコワルイ」天然知性。
それは

「異質なものを受け入れ続けることにしか、外部に開かれる術はないのです」

 

「異質なものを受け入れ続けること」。
この国は、この国の人は建前と本音でズレがある。
本来、それは得意だったはずなのだが。

 

この本の帯文を養老センセイが書いている。
立ち読みしたので大まかな記憶だけど、
AIが図に乗ったらコンセントを抜けばいいと。
ああ名言だと思った。

 

「中動態」にもつながる。

『中動態の世界』國分功一郎著のレビュー。
http://soneakira.hatenablog.com/entry/2018/08/02/175245

 

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かいーの

死を忘れるな (白水Uブックス)

死を忘れるな (白水Uブックス)

 

 

 1日1回服用の市販の花粉症薬が、
なんとなく効いていたが、
今日は目に来た。かゆみが。


『死を忘れるな』ミュリエル・スパーク著 永川玲二訳を読む。
やすらぎの郷』のミステリー版といったところか。
高齢化社会を先取りしたような作品。

12人の老婆が入院している病棟。
同じ患者だが、病状も違うし、キャラクターはもっと違う。
「グラニー(グランドマザーの略称)」と呼ばれることに抵抗がある。
ネットじゃありえない濃厚でめんどくさいしがらみ。

読んでいて『モンティ・パイソン』のコント、
お婆さんの不良グループを思いうかべてニヤッとする。

ニコ動にあった。

www.nicovideo.jp

 

いたずら電話なのか脅迫電話なのか
不明な電話がたびたびかかる。

それが不幸の手紙みたいに伝播していく。

でもって次々と死者が。
自然死、不審死。

長い間、使えたベテランの女中さんが
遺産相続人となって
かなりの遺産をもらえることになった。
面白くないのは
ふだん付き合いはないが、
金が絡むと手のひら返しの親族。
しかし女中さんも負けない。
あ、メイドと言うべきか。

 

お婆さんは病院や施設にいても
口ゲンカぐらいはする。
でも、始末が悪いのはお爺さんの方。

口ではかなわないので
いきなり暴力に出るとか。

 

最晩年、ぼくの父親も施設で殴りはしないが、
気に入らない相手に罵声を浴びせたとか。
些細な理由だったなあ。
しばらく食事は自室でしていたそうな。

 

 

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サルベージ

 

書きかけの詩のようなものをサルベージして
一応、仕上げた。

 

 

アルバイト

 

 

アルバイトから帰ると
姉さんは、テレビで「特集 皆既日食」を見ていた。

 

僕のアルバイトは工場へ行って、肺活量測定器に似た機械で
空気をいっぱいタンクの中に送り込むことだ。


みんな20歳の誕生日を迎えると自然と辞めていく。

僕たちの空気の使い道は誰も知らない。


週3回、午前10時から12時までの2時間、
懸命に空気を送るだけで割といいお金になる。

 

あと3カ月で僕はこのアルバイトをリタイヤしなければならない。

 

ジェイソン通りにある楽器屋へ
僕はアコーディオンの残りの半金を払いに行った。

 

この仕事のせいか、息が切れる。若さが吸い取られていくせいだろうか。
余り長くはできない。

 

「そろそろ学校に戻ったらどうなの。そんなプラプラしてちゃダメよ」。
あんたもね。姉さんだけには言われたくない。

 

部屋に入ってアコーディオンの練習をする。
まともに弾けるようになるまでは、まだまだ。

 

それまで息が持つだろうか。

 

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