3度読んだ

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)


昔、友人が住んでいた公団に行ったとき、
小柄痩身、甚平姿の老人を見かけた。
鈴木清順だった。
友人に聞いたら、同じ団地住まいとか。

陽炎座』『 ツィゴイネルワイゼン』を
桑沢デザイン研究所の隣に建てられらた
架設テントの映画館で見た。
そのシネマプラセットの仕掛け人、
荒戸 源次郎が昨年亡くなった。で、鈴木清順
総括は、たぶん、週刊文春小林信彦のエッセイで。

『ジュリエット』アリス・マンロー著を読む。
エンタメ系小説のように飛ばし読みができない。
だって、それだと、まったく内容がわからないから。
「ジュリエット三部作」は、3度読んだ。
1度目は下書き、2度目はペン入れ、3度目はベタあるいは着色。
ようやく全貌が見えてきた。ああそういうことかと。
短編なのだが、あえて省略というのか。フェイドアウトだらけ。
俳句みたいに、読む人の想像力にゲタを預ける方式かも。

訳者あとがきで「ジュリエット三部作」が、
ペドロ・アルモドバル監督により
映画化されたことを知る。
母と娘の話だが、小説のままでは映像化しにくいと思う。
感想が書きにくいからということは、
作品のできの判断の目安には決してならない。
あとは、やはり、『パワー』に、うなった。
エスパーだった女性の話。
これがまた作者らしい仕立てで。

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オトナのカイダン、のぼる

青春怪談 (ちくま文庫)

青春怪談 (ちくま文庫)

 

昨日、以前勤務していたデザイン会社の社長から
メールが来た。
会社をたたんだというメールだった。
子どもが後を継ぐという話を小耳にはさんでいたんだけど。
社員時代は最初は期待に添えず迷惑をかけたが、
最後の頃は、割と力になっていたと思う。
企画書の書き方や商品企画の仕事など
文章を書く以外のことで鍛えてもらった。

『青春怪談』獅子文六著を読む。
いやはや、なんて洒落てる、なんて達者。
これぞ、ラブコメ
イケメンでクールな起業家タイプの男性と
スリムで中性的なバレリーナの女性。
二人は自分たちが結婚する前に、
それぞれひとり者である親同士を
一緒にしようと策を図る。
男性はイケメンゆえ怪しげな女性たちが寄ってくる。
二人の目論見は、二人の恋の行方は。

解説の山崎まどかによると、
新聞小説だったのか、これも。
で、2度映画化、1度テレビ化されているそうな。
この面白さは、今でも十分通じる。
キャスティングを妄想する。

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腸内フローラ逍遥

土と内臓 (微生物がつくる世界)

土と内臓 (微生物がつくる世界)


『土と内臓』デイビッド・モントゴメリー アン・ビクレー著を読む。
地質学者の夫と生物学者の妻が、
購入した家の庭の再生から話ははじまる。
ミミズ、コーヒーかす、木材チップでつくる自家製有機肥料
死んだ土の再生に欠かせない微生物の役割。
微生物は、私たちの身体にもつながるテーマ。

腸内フローラ(腸内細菌類)などがクローズアップされているが、
そこもばっちりと書かれている。

参考までに。

 

「私たちの腸には約3万種類、1000兆個に及ぶ細菌類がすんで」いて
「私たちの体を多方面から助け、病気にならないように、また、
老化を防ぐように働いていることがわかっています。」

 

 

「寿命まで左右する!驚異の「腸内フローラ」腹時計が乱れると、万病を引き起こす」藤田 紘一郎 :東京医科歯科大学名誉教授より引用

 

「近年の発見を見れば見るほど、微生物が植物と人間の健康維持に
果たす共通した役割に、私たちは興味をそそられた。
そして私たちは、人間の体表面と体内に住む新しい呼び名―
ヒトマイクロバイオームを知った。地力を回復させ慢性的な現代病の
流行に対抗するのに微生物が役立つことを、私たちは知り始めた。
自然のまったく新しい見方を、私たちは偶然発見したのだ」

 



夫婦の実体験と微生物から有効な新薬の発見などが
サンドウィッチされていて飽きさせない。
がんに罹った妻が、
退院後、食生活をプレバイオティクスに変える。
夫もおつきあいして歩くことをプラスしたら
みるみる体重が減って体調も良くなったと。

畑に化学肥料を使うのと、病気に抗生物質を使うのは似ていると。
微生物によるサイクルをショートカットしてくれるかもしれないが、
思わぬ副作用が生じる。
有機農法、バンザイではないが。

漫画『もやしもん』の主人公は菌が見える能力があったが、
同じように微生物が見えたら、結構怖いかも。

カール・セーガンの元妻、リン・マーギュリス、
知らなんだ。

「すべての多細胞生物は単細胞の生命体、主に細菌が
物理的に合体して発生したと、マーギュリスは提唱した」


で、グールドが噛みついた。とんでも理論だと。
作者の見解。

 

「マーギュリスは微生物に、グールドは化石記録に残った
動植物に重点を置いていた」

 


進化をミクロで見るか、マクロで見るか。
ぼくは前者を支持したい。

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数学する身体

数学する身体

数学する身体

 

読みたかった『数学する身体』森田真生著を読む。
休刊が決まった雑誌『考える人』に連載中は、
とびとびで読んでいた。

「独立研究者」として無所属で数学研究している作者にとって
アラン・チューリング岡潔は、まさに先達、師的存在なのだろう。
あ、松尾芭蕉もか。
数学史と哲学と数学に関する論考というと頭で考えたように
思われるかもしれないが、作者は身体をつかって考える。
研究室ではなく日々の日常性から思索する。
それが、実にみずみずしく記述されている。

チューリングは、コンピュータが
「計算する機械」から「数学する機械」へ。
やがて「人間のように思考する機械」へ進化することを
信じていた。
そうなりつつある、いま。

長めの引用。

 

チューリングが、心を作ることによって
心を理解しようとしたとすれば、岡の方は心になることに
よって心をわかろうとした。チューリングが数学を道具として
心の探求に向かったとすれば、岡にとって数学は、
心の世界の奥深くへと分け入る行為そのものであった。
道元にとって禅がそうであったたように、また芭蕉にとって俳諧
そうであったように、彼にとって数学は、

それ自体が一つの道だったのだ」

 

愚直に言えば、西洋と東洋の違いかも。
小理屈をこねるならば、
『数学する身体』から『身体(化)する数学』へ。
名料理人の包丁さばきが身体と包丁が一体化しているように、
数学も身体と同化している。

この本を読んで数学を学ぼうとする若者もいるはず。
金はないから、賛辞の拍手を掌が痛くなるまでしてあげよう。

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ゴディバを3粒

 

ヴァレンタインデーは、ゴディバを3粒。
なめながら、資料を読んだり、
原稿を切り刻んだり。

ディケンズ短篇集』小池滋石塚裕子訳を読む。
ディケンズの企み、狙い、人の暗黒部分などが
うねりをあげて怪奇小説スクルージならぬスクイージ。
で、勝手にベスト3。

『奇妙な依頼人の話』
恨み晴らさでおくべきか。という復讐劇。
報復だけで人生の後半を生きる男。
最後に救いが。いる、いらない。

『子守り女の話』
スティーブン・キングも裸足で逃出すような、ほら&ホラー。
「殺人鬼大尉」は怖くて笑っちゃう。
「お前もミートパイにしてやろうか」。
それから韻を踏むラップのような歌を歌う悪魔。
さすがマザーグースの国。

『信号手』
3人の訳者のを読んだが、絶品。
確か、小池は英国鉄道オタク、テッチャンだしなあ。
「おうい!そこの下の人!」
このフレーズは夢に出てきそう。

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最新の書きますた

FiNSTARジャーナル【コンサルタントF山の不動産講座】で
担当したコラムを紹介。
難しそうな専門用語をなるたけ分かりやすく書きますた。

 

築年数が古いマンション購入時はご注意!建て替えリスクを調査しよう

 

媒介契約書には専属専任・専任・一般の種類があるって知ってた?

 

管理組合あるある?修繕積立金が足りないなんて!そんな時どうする?

 

管理組合の運営は結構ツライ!法人化することで得られるメリットって何?

 

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似てるようで全然違う!根抵当権と抵当権の違いをマスターしよう!

 


知っていれば一安心!媒介手数料の計算方法のウラ側、覗いてみませんか?

 

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不動産の売買契約で、手付金はどれくらい必要?適正な金額を知ろう!

 

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そうだ 獅子文六 読もう

自由学校 (ちくま文庫)

自由学校 (ちくま文庫)

 

またもや仕事がくっついた。
ネコに明け方起こされても
朝までよく寝て、音声データ起こしと
コラム用の資料の出力にかかる。

『自由学校』獅子文六を読む。
最近、読むスピードが落ち気味。
こういうときは、とびきりおもしろいのを
読むのに限る。
で、ちくま文庫版で未読の『自由学校』を手にする。
かっぱえびせん状態。
♪やめられない とまらない♪

風采のあがらない夫に愛想を尽かした妻。
無断で会社を辞めた夫は家から出されるが、
結果、自由を満喫する身となる。
仕事もできる妻は、魅力的で
アプレの若者から金持ち紳士、力自慢の男まで
言い寄られる。
戦後の東京の復興やら混乱やらが書かれている。
キャラ造詣がバツグン。
映画『社長漫遊記』シリーズの登場人物を
当てはめたりしていた。
河村黎吉、森繁久彌小林桂樹三木のり平
加藤大介、フランキー堺小沢昭一
新珠三千代司葉子淡路恵子などなど。

解説を書いている戌井昭人って
戌井市郎の孫なのか。
文学、音楽、アート系の人って
隔世遺伝が意外と多いような。
親子だと反面教師になるのかな。

元のさやにおさまった夫婦のスタイルが、
こりゃまた時代の先をいっている。

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