世界はそれをAIと呼ぶんだぜ

老いると猫も寝ている椅子から転げ落ちる。

人工知能って、そんなことまでできるんですか?』
松尾豊、塩野誠共著を読む。


コンピュータ、AIについて
なんとなくうっすらとは知っているが、
せめて基本的なことは知っておきたい。
そんな人にはうってつけの本。
「ビジネス戦略家」の塩野氏が、生徒役で
人工知能の専門家」で「東大准教授」の松尾氏が先生役。

以下ランダムに引用と感想。

人工知能と呼ばれないプログラムと比べると、
挙動が状況に応じて変わる、状況に応じてより適切なふるまいを
するところが、いちばんの違いと言っていいでしょう」

 


「適切なふるまい」、学習能力か。物覚えの悪いおとうさんよか
ルンバの方が賢いとか。

「予測精度が異様に高い人工知能が、人間の役割にとって代わり、
自己複製をはじめたとき、人間の存在意義はどこにあるのか」


移民に職を奪われた白人のように、AIに職を奪われる日が来るのか。
「生き残れる職業、生き残れない職業」ビジネス誌の特集を思い浮かべる。

人は「直観的な因果関係を重視する」

 

 

たとえ間違いだったとしても。
それを屁にも思わない

人工知能の判断に従えるか」。

 

 

2001年宇宙の旅』のHALとか。

「「ユークリッド空間から位相空間への写像マシン」
脳は位相化を行う装置であり、人工知能の本質はそれを
エミュレートするところにあると考えます」

しびれる。

 

「ロボット3原則」ならぬ「AI3原則」でもできるのか。

AIの進化が、「人類の謎」や人間の脳をさらに解明し、
いきつくところは、神の存在を立証するとか。


対談をうまく構成してある。
用語解説も丁寧についている。
入門書のお手本のような本。
願わくば、参考になるようなブックリストも
つけてほしかった。

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つらいのお~

男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学

男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学

 

気温の乱高下は、つらいのお~。

『男がつらいよ』田中俊之著を読む。
副題が「絶望の時代の希望の男性学」。
読むきっかけは、J-WAVE『OTHERS』。
ゲストで著者が出ていた。
女性学はたくさんの研究者がいる。
一方、男性学は、いわゆるニッチ。
女性学レッドオーシャンなら、男性学ブルーオーシャン
ゆえに、男性学を選んだと。

で、さくっと読めた。
森岡正博の『感じない男』から、告解と性癖を抜いたような本。
ほらメンズ・リブとか、ちょっと注目されたけど。
どうしてもオス度の高い従来の男性優位主義とは
あえて真逆の立ち位置なんで、
マッチョな人は、読んだら立腹するだろう。
そうだ、そうだと一服した人とて
別段えらいとかそういうわけではない。

コケンとコカンにこだわるのが男性のさがだとしたら、
脱ぎ捨てようと。
「生きづらい」のは何も女性だけではなくて、
男性もそうだと。
『男が』の「が」は、男の方がつらいと言いたいのだろうね。
それはこっそり、うなづける。
終身雇用制の企業で会社員をしていないと、
結婚をしておらず、当然子どもがいないと、
近所の口さがないおばさんたちの井戸端会議のネタになる。
「子どもが好きだから先生になりました」などでも言おうものなら、
白眼視される当世。
昼日中、家でブラブラしているフリーライターなぞも
白眼視される当世。
「男らしさ」って何だろうと、改めて思う。

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ゆりと吸血鬼

吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)

吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)


12000文字を2000文字にする作業も、
なんとなく形がついてきた。

『吸血鬼カーミラ』レ・ファニュ著 平井呈一訳を読む。
他の短編もおもろかったが、
やはり表題作がダントツ。
「でございます」調が、中学生のとき、
文学にマセていた同級生から借りて読んだ『ファニー・ヒル』を
思わせる文体。
真似したくなる。実際にした。
訳者の作品ごとに文体を変えるテクは、見事。
要するに、ゆりもの。美貌の女性吸血鬼とヒロインの話。
妖しくて妄想をかきたてられる。
解説によると、1871年―1872年に書かれたそうだ。
日本だと明治3-4年か。

訳者の解説でレ・ファニュのほとんど隠遁生活で
怪奇小説に捧げた生涯にも
興味を覚えた。
執筆は真夜中、作品のモチーフは夢からという。
『こんな怪奇小説ばかり書いていた。』

そうか、ロジェ・バディムの映画『血とバラ』の原作だったのか。
映画は、はるか昔、東京12チャンネルの深夜か午後のカットだらけで
しかも吹き替え版で見たと記憶しているが、さすがに詳細までは。

アニメ『ユリ熊嵐』の製作チームでアニメ化してもいいなと
勝手に思う。

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のんスタイル

先日、妻が世田谷パブリックシアター
劇団300の『鯨よ!私の手に乗れ』
観に行った。世代的に身につまされる話で泣いて笑ってと。
楽屋見舞いに行ったら、顔の小さな女の子とすれ違ったそうな。
どっかで見たことがある。誰だっけ。
のんちゃんだった。この芝居の舞台やチラシに彼女のイラストが使われているとか。
劇団300の新作に、のんちゃんが出るんだったら、連れてってもらおう。

今日、ユーロスペースでやっと『この世界の片隅で』を見た。
移転したユーロスペース、初見参。
渋谷ランブリングストリートにある。

前評判の良さやうわさで見た気になっていたが、
第二次世界大戦前後のの広島や呉にタイムスリップしてしまった。
当時の暮らしぶり、風習・風俗などが丁寧に描かれている。
戦時下がそんなに暗くないこと、鬼畜米英でないことは、
小林信彦の小説などでうっすらと知ってはいたが。
空襲、敗戦。喪失からのゆるやかな復興。

日本のアニメーションの素晴らしさを感じる。
まいりました。

喜怒哀楽。
ヒロインすずの声を演じたのんちゃん。
ひきこまれてしまった。
やはり彼女あっての作品なのだろう。
この天性の、とか使っても言いだろう、
コメディエンヌをなぜ使わない。
オトナの事情とは言え。

仁義なき戦い』のはじまりは、
戦後の呉の闇市を舞台にしている。
すずさんと広能昌三がどっかですれちがっていたりして。

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怖いい話

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)


Facebookで同級生の陶芸家の窯場兼自宅が
雪まみれの画像を見る。
峠の麓にあるからなあ。
白い悪魔に襲われる、ふと『シャイニング』を思い出した。
録音したラジオ番組を聴きながら、
だらだらと仕事。

怪奇小説傑作集1』A.ブラックウッド他 平井呈一編・訳を読む。
訳者による「本格的アンソロジー」。
こなれた訳、こなれすぎた訳か。
美味、珍味の怖いい話。
ぼくの好みで3作選ぶなら

猿の手』W.W.ジェイコブズ

願いをかなえると言われる猿の手のミイラ。
芥川龍之介あたりなら
平安時代とかに設定を変えて上手に
換骨奪胎するんだろなあ。

『いも虫』E.F.ベンスン

これは大量のいも虫がうごめくシーンに
薄気味悪さを感じながらひかれるものを。
庭のツバキの葉裏に
びっしりと発生したチャドクガの幼虫とかね。
なんでも大量にいるのは、あるのは、どこか怖ろしい。

『緑茶』J.S.レ・ファニュ

緑茶の効用。と書くと、岡倉天心かと。
ちゃいます。スタイリッシュでクラシックな怪奇小説
ほうじ茶を飲みながら読んだ。

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カレーなる一族

四人の交差点 (新潮クレスト・ブックス)

四人の交差点 (新潮クレスト・ブックス)

 

原稿を書く合間に、音声データを起こす。
この繰り返し。
なんとか間に合いそうだ。

昼にほうとうタイプの麺を入れたカレーうどん
つくって食べると眠くなる。

『四人の交差点』トンミ・キンヌネン著を読む。
祖母、母、父ら家族代々の物語。
まるで地味なノンフィクションのように
展開する。
読み終わると、4つのライフ・ヒストリーが重なって余韻が残る。
舞台はフィンランド
ソ連嫌いで、ゆえに第二次世界大戦ナチス・ドイツと反ソで手を組む。
やがてソ連支配下となり、ナチス・ドイツと戦うことに。
歴史のねじれの投げかける影は、
この物語の家族にも及ぶ。
実家の遺品整理で出てきた古いアルバムを広げたときに
似た読後感。

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事件は現場で起きている、ポップスもだ。

『「ヒットソング」の作り方』牧村憲一著を読む。
CMソングで大瀧詠一と出会って
シュガーベイブ山下達郎大貫妙子坂本龍一
加藤和彦などなどのミュージシャンのディレクター、
プロデューサーとして
著者がかかわっていたアルバムを結構持っていた。
LPレコードさ。
フリッパーズ・ギター以前。

日本のポップスの生き証人といえば大げさだけど、
道なき道を苦労して切り拓いた
日系移民の一世をふと思い浮かべた。
この手の本だと音楽評論家か
もしくはミュージシャンの回想録的なものが多いのだが、
現場というか裏方から見た私的日本のポップス史。
成功もあるが、失敗もある、その方が当然だけど多い。
めげることなく作者は良質の、新しいポップスに立ち向かう。

三木鶏郎の継承者とみなされた大瀧詠一
大瀧詠一山下達郎の音楽に対する立ち位置の違いは、
特に面白かった。

山下達郎のソロアルバム『サーカス・タウン』は、
いま聞いても新鮮だが、ニューヨーク、ロスレコーディングに
骨を折ったのが、作者だったとは。

参考までに。作者が所属していたCM制作会社の話。
『みんなCM音楽を歌っていた―大森昭男ともうひとつのJ-POP』田家秀樹著の拙レビュー

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